10万・20万・30万の壁
この部の 6 / 7 章 ・ 全体で 28 / 53 章 ・ 読了目安 20 分
この章を読むとできるようになること
- 取得価額ごとの選択肢を整理できる
- 所得の見込みに応じて有利な方法を選べる
機材を買う時、金額によって扱いが4段階に分かれます。 この境界を知っているかどうかで、同じ買い物の税負担が変わります。
10万円未満 → その年に全額経費(消耗品費)
10万〜20万円未満 → 一括償却資産(3年で均等償却)という選択肢が増える
20万〜30万円未満 → 少額減価償却資産の特例(青色申告者のみ)
30万円以上 → 通常の減価償却
判定は税込か税抜か
最初に確認すべき点です。
免税事業者・税込経理 → 税込金額で判定
課税事業者・税抜経理 → 税抜金額で判定
税抜98,000円(税込107,800円)のモニタ
税抜経理 → 10万円未満 → 消耗品費(全額経費)
税込経理 → 10万円以上 → 資産計上
4つの選択肢
| 区分 | 対象額 | 処理 | 条件 |
|---|---|---|---|
| 少額の減価償却資産 | 10万円未満 | その年に全額経費 | なし |
| 一括償却資産 | 20万円未満 | 3年で均等償却(月割りなし) | なし |
| 少額減価償却資産の特例 | 30万円未満 | その年に全額経費 | 青色申告・年間300万円まで |
| 通常の減価償却 | 制限なし | 耐用年数で償却 | — |
少額減価償却資産の特例には適用期限がある
この特例は期限付きの措置で、これまで延長が繰り返されてきました。
購入前に「その年に適用できるか」を国税庁のページで確認してください。 また、年間の合計300万円という上限があります(事業年度が1年未満の場合は月割り)。
一括償却資産という選択肢
20万円未満の資産は、3年で均等に経費にできます。
15万円のモニタを 11月に購入した場合
通常の減価償却(耐用年数5年)… 150,000 × 0.200 × 2/12 = 5,000円
一括償却資産 … 150,000 ÷ 3 = 50,000円(月割り不要)
少額特例(青色) … 150,000円 全額
一括償却資産の隠れた利点:償却資産税がかからない
一定額以上の事業用資産を持つと、償却資産税(固定資産税の一種)がかかります。
課税対象: 事業用の機械・器具・備品など(土地建物を除く)
免税点: 課税標準額の合計 150万円未満なら課税されない
一括償却資産として処理したものは、償却資産税の課税対象から外れます。 一方、少額特例で全額経費にしたものは課税対象に含まれます。
多くのフリーランスは150万円の免税点に届きませんが、 機材を多く持つなら知っておく価値があります。
選び方
所得が十分にある年(税率が高い)
→ 少額特例で全額を今年の経費にする(30万円未満)
所得が少ない年・赤字の年
→ 通常の減価償却か一括償却で、経費を将来に残す
(赤字を膨らませても、繰越は3年まで)
機材が多く、償却資産税の免税点150万円が近い
→ 20万円未満は一括償却資産にする
「全額経費にできる」が常に有利とは限らない
所得が低い年に経費を集中させても、その年の税率が低ければ節税額は小さいです。
所得200万円の年(税率5%)に30万円を経費化 → 節税 約1.5万円(住民税含めて約4.5万円)
所得700万円の年(税率23%)に30万円を経費化 → 節税 約7万円(住民税含めて約10万円)
経費は、税率が高い年に使うほうが価値があります。 資産の償却方法は、その数少ない調整手段です。
判定フロー
機材を買った
↓
取得価額(付随費用込み)はいくら?
↓
├ 10万円未満 ────────────→ 消耗品費(全額経費)
│
├ 10万〜20万円未満
│ ├ 今年の所得が高い → 少額特例(青色)で全額経費
│ ├ 償却資産税を避けたい → 一括償却資産(3年均等)
│ └ 経費を将来に残したい → 通常の減価償却
│
├ 20万〜30万円未満
│ ├ 今年の所得が高い → 少額特例(青色)で全額経費
│ └ それ以外 → 通常の減価償却
│
└ 30万円以上 ────────────→ 通常の減価償却
年末の駆け込み購入について
12月に30万円の機材を買った場合:
通常の減価償却 → 1ヶ月分だけ(40万円の PC なら 8,333円程度)
少額特例 → 全額(ただし30万円未満)
必要なものを、必要な時に買う
少額特例を使えば年末購入でも全額経費になりますが、 現金は出ていきます(経費とは何か)。
30万円の機材を買う → 節税は税率30%として9万円 → 正味21万円の支出
来年必要になるものを前倒しするのは合理的です。 必要でないものを税金のために買うのは、ただの浪費です。
セット判定に注意
□ 独立して使えるもの → 個別に判定
PC 9万円 + モニタ 6万円 → それぞれ消耗品費
□ 一体でなければ機能しないもの → 合計で判定
サーバー本体 + 専用ラック、ソフトウェアとその専用ライセンス など
判断に迷う場合は、「単体で売れるか、単体で使えるか」 を基準にしてください。
青色申告をしています。今年の所得は約700万円の見込みで、来年は案件が減って所得が下がりそうです。12月に、来年の開発で使う予定の28万円のワークステーションを購入しました。どう処理するのが有利でしょうか?
この章のまとめ
- 境界は10万・20万・30万。判定は税込経理か税抜経理かで変わる
- 取得価額には送料・設置費などの付随費用を含める
- 一括償却資産(20万円未満・3年均等)は月割り不要で、償却資産税の対象外
- 少額減価償却資産の特例(30万円未満)は青色申告者のみ。年間300万円まで、期限あり
- 経費は税率の高い年に使うほうが価値がある。償却方法はその調整手段
- 年末の駆け込み購入は、必要なものを前倒しする場合のみ合理的
- セット判定は「単体で使えるか」で判断する
参考資料
| 対象 | リンク |
|---|---|
| 国税庁 No.2100 減価償却のあらまし | https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm |
| 国税庁 少額減価償却資産の特例 | https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm |
| 総務省 償却資産(固定資産税) | https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/ |
読み終わったら記録しておくと、目次で進み具合が分かります。