フリーランスエンジニアの実務

freee の初期設定

この部の 2 / 6 章 ・ 全体で 18 / 53 章 ・ 読了目安 20

この章を読むとできるようになること
  • 最初に設定を間違えると後で全件やり直しになる箇所を把握できる
  • 開始残高を正しく入れられる

初期設定は、あとで変えると全部やり直しになる項目が混ざっています。 特に消費税設定開始残高は、間違えたまま1年進むと全取引の見直しになります。

この章で、最初に決めるべきものを片付けます。

画面の名称について

freee の画面構成やメニュー名は更新されます。この章は設定すべき項目と考え方を扱います。 名称が違う場合は、同じ意味の項目を探してください。

1. 事業所の基本設定

画面: 右上の歯車アイコン → 「事業所の設定」

┌─ 設定 › 事業所の設定 ─────────────────────────────────┐
│                                                      │
│  事業所名          [ Foo Works                     ] │ ← 屋号。無ければ氏名
│  事業所名(カナ)   [ フーワークス                   ] │
│  住所             [ 〒000-0000 東京都...           ] │ ← 納税地
│  電話番号          [ 000-0000-0000                 ] │
│                                                      │
│  事業年度          [ 2026-01-01 ] 〜 [ 2026-12-31 ] │ ← 個人は暦年で固定
│  申告書の種類       (●) 青色申告   ( ) 白色申告        │ ← 承認申請済みなら青色
│  業種             [ 情報通信業 ▼ ]                   │
│                                                      │
│  消費税の課税方式    [ 免税事業者 ▼ ]                  │ ← ここが最重要
│  経理方式          (●) 税込   ( ) 税抜                │
│  インボイス登録番号  [ T1234567890123              ] │ ← 未登録なら空欄のまま
│                                                      │
│                                     [ 保存 ]         │
└──────────────────────────────────────────────────┘
何を入れるか迷いどころ
事業所名屋号。無ければ氏名決算書と請求書に出る。後から変更できる
事業年度1月1日〜12月31日個人事業は暦年で固定。法人と違い選べない
申告書の種類青色申告承認申請を出していなければ白色(開業届と青色申告承認申請書
業種情報通信業・サービス業など勘定科目の初期セットが変わるだけ。神経質にならなくてよい
消費税の課税方式免税 / 簡易課税 / 本則課税後から変えると全取引の税区分が再計算される(後述)
経理方式免税なら税込10万円の判定が税込・税抜で変わる(10万・20万・30万の壁
インボイス登録番号T + 13桁未登録なら絶対に入れない。請求書に印字されてしまう

2. 消費税の設定(最重要)

ここを間違えると、すべての取引の税区分が狂います

開業1〜2年目で、インボイス登録をしていない → 免税事業者
インボイス登録をした                        → 課税事業者
  ├ 2割特例を使う           → 申告時に選択(設定は簡易課税でなくてよい)
  ├ 簡易課税を選択している    → 簡易課税
  └ どちらでもない          → 本則課税(原則課税)
課税方式帳簿への影響
免税事業者税込経理。税区分を意識しなくてよい
簡易課税・2割特例売上の税区分が重要。仕入の税区分は納税額に影響しない
本則課税売上・仕入の両方の税区分が納税額に直結する。インボイスの有無も記録が要る
本則課税なのに税区分を放置すると、年末に地獄を見る

本則課税では、仕入先がインボイス発行事業者かどうかで控除できる額が変わります。

年末にまとめて直そうとすると、1年分の取引を1件ずつ確認することになります。 最初に課税方式を確定させ、日々の登録時に税区分を正しく選んでください(第5部)。

3. 開始残高の登録

新規開業の場合と、既に事業をしていた場合で異なります。

画面: 設定 → 「開始残高の設定」

┌─ 設定 › 開始残高の設定 ───────────────────────────────┐
│  期首日: 2026-01-01(または開業日)                     │
├──────────────────────────────────────────────────┤
│  勘定科目                        期首残高              │
│  ─────────────────────────────────────────        │
│  現金                           [        30,000 ]    │ ← 手元の事業用現金
│  普通預金(三井住友銀行)          [       500,000 ]    │ ← 通帳の残高と一致させる
│  売掛金                         [             0 ]    │ ← 前年からの未入金
│  工具器具備品                    [       120,000 ]    │ ← 転用した私物 PC の時価
│  未払金                         [             0 ]    │ ← 前年からの未払い
│  ─────────────────────────────────────────        │
│  元入金                              650,000         │ ← 差額。自動で計算される
│                                                      │
│                                     [ 保存 ]         │
└──────────────────────────────────────────────────┘

新規開業の場合

開業日時点で事業に投じた財産を登録します。

例: 開業日に事業用口座へ50万円を入金し、私物の PC(時価12万円)を事業用に転用した

  普通預金   500,000
  工具器具備品 120,000
  元入金     620,000  ← 差額が元入金になる
私物を事業用に転用できる

開業前から持っていた PC・モニタ・机は、開業時の時価で事業用資産にできます

時価の目安: 購入価格から、使用期間に応じた減価を差し引いた額
(同等品の中古相場を調べて、根拠としてメモに残す)

10万円以上なら固定資産として登録し、以後は減価償却で経費にします(減価償却)。

前年から事業をしていた場合

前年の貸借対照表の数字をそのまま入れます。

□ 現金・普通預金の期末残高
□ 売掛金(未回収分)
□ 未払金(未払いのカード等)
□ 固定資産の未償却残高
□ 元入金
開始残高がゼロのまま使い始めない

開始残高を入れずに始めると、貸借対照表の預金残高が実際とずれ続けます

「なぜか残高が合わない」の原因の上位がこれです。 最初の1回だけの作業なので、必ずやってください。

4. 口座・カードの登録

□ 事業用の銀行口座(同期設定は[口座・カード連携と「自動で経理」](/chapters/freee-sync/))
□ 事業用クレジットカード
□ 現金(小口現金を使う場合)
□ プライベート資金(事業主借・事業主貸の受け皿として自動で用意される)

5. 勘定科目とタグの設計

勘定科目

初期セットに、自分の事業で使う科目を追加します(勘定科目の地図)。

追加を検討するもの:
  「システム利用料」  SaaS・クラウドの月額をまとめたい場合
  「研修費」          カンファレンス・書籍以外の学習費用

タグ(取引先・品目・メモタグ)

freee には勘定科目とは別にタグがあります。ここを設計すると、後の分析が変わります。

タグ使い道
取引先取引先ごとの売上・売掛金を集計する。回収管理に必須
品目科目より細かい分類(「AWS」「GitHub」など)
部門複数事業を持つ場合に事業別で分ける
メモタグ案件名・プロジェクト名。案件別の採算を見られる
案件名をメモタグに入れると、単価交渉の材料になる
案件A: 売上 480万円 / 直接かかった経費 30万円 / 稼働 900時間 → 時間あたり 5,000円
案件B: 売上 200万円 / 直接かかった経費 10万円 / 稼働 250時間 → 時間あたり 7,600円

どの案件が実際に効率が良いかは、タグを付けていないと永久に分かりません。 単価の決め方で使います。

6. 家事按分の設定

freee には家事按分の設定機能があります。

画面: 決算 → 「家事按分」

┌─ 決算 › 家事按分 ────────────────────────────────────┐
│  対象年度: 2026年                                     │
├──────────────────────────────────────────────────┤
│  勘定科目          事業利用の割合        年間の対象額     │
│  ────────────────────────────────────────         │
│  地代家賃          [ 20 ] %            1,800,000     │
│  水道光熱費        [ 20 ] %              120,000     │
│  通信費           [ 70 ] %              180,000     │
│                                                      │
│  + 家事按分の設定を追加                                │
│                                     [ 保存 ]         │
└──────────────────────────────────────────────────┘
        ↑ 割合は自分で決めて入れる。ソフトは計算してくれない
設定: 勘定科目ごとに事業割合(%)を登録する
      例: 地代家賃 20% / 水道光熱費 20% / 通信費 70%

効果: 決算時に、その科目の年間合計から事業割合分だけを経費に振り替える
      (残りは事業主貸として戻る)

按分率の根拠は自分で決めて記録します(家事按分の考え方)。 ソフトは割合を計算してくれません。

7. 固定資産台帳

10万円以上の資産を買ったら、必ず固定資産台帳に登録します。

□ 資産の名称
□ 取得日・取得価額
□ 耐用年数([減価償却](/chapters/depreciation/))
□ 償却方法(個人事業は原則「定額法」)
□ 事業使用割合(自宅兼用の PC なら 80% など)

登録すれば、毎年の減価償却費は自動計算されます。 登録しなければ、その資産は永久に経費になりません。

初期設定チェックリスト

□ 事業年度が 1/1〜12/31 になっている
□ 申告の種類が青色になっている(承認申請済みの場合)
□ 消費税の課税方式が実態と合っている
□ インボイス登録番号を入力した(登録している場合)
□ 開始残高を入力した(預金・売掛金・未払金・固定資産・元入金)
□ 事業用口座とカードを登録した
□ 取引先タグを主要な取引先分だけ作った
□ 家事按分の対象科目と割合を登録した
□ 開業時に転用した私物を固定資産台帳に登録した

8月に開業し、freee を使い始めました。事業用口座には開業日時点で30万円ありましたが、開始残高を設定せずに取引を登録していました。12月に貸借対照表を見ると、普通預金が実際の残高より30万円少なくなっています。どうすべきでしょうか?

この章のまとめ

  • 初期設定にはあとで変えると全部やり直しになる項目がある
  • 消費税の課税方式が最重要。本則課税なら日々の税区分が納税額に直結する
  • 開始残高を必ず入れる。入れないと預金残高がずっとずれる
  • 開業前から持っていた私物は、開業日の時価で事業用資産に転用できる
  • 取引先タグとメモタグ(案件名)を設計すると、後から案件別の採算が見える
  • 家事按分は割合を自分で決めて登録する。根拠は自分で記録する
  • 10万円以上の資産は固定資産台帳に登録。登録漏れは永久に経費にならない

参考資料

対象リンク
freee ヘルプセンターhttps://support.freee.co.jp/
国税庁 消費税のしくみhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/shohi.htm
国税庁 減価償却のあらましhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
読み終わったら記録しておくと、目次で進み具合が分かります。