フリーランスエンジニアの実務

案件の取り方

この部の 2 / 7 章 ・ 全体で 48 / 53 章 ・ 読了目安 20

この章を読むとできるようになること
  • 案件獲得経路ごとの利点と代償を比較できる
  • 直契約に必要な準備を把握できる

案件の取り方は3つに分かれます。手数料と、負う責任が違います

経路手数料特徴
エージェント10〜30%程度案件が途切れにくい。単価は低め
直接契約なし単価は高い。営業・契約・回収を自分でやる
紹介・リファラルなし最も成約率が高い。信用が前提

エージェント経由

利点:
  □ 営業をしなくても案件が来る
  □ 契約・請求・入金を代行してくれることが多い
  □ 未払いリスクが低い(エージェントが支払う)
  □ 途切れた時に次を紹介してもらえる

代償:
  □ 手数料(元単価の10〜30%)
  □ 商流が深くなると単価が下がる([偽装請負と常駐案件](/chapters/disguised-contracting/))
  □ 常駐・準委任が中心になりやすい
  □ 実際の発注元と直接交渉しにくい
手数料率を聞いてよい
「差し支えなければ、御社の手数料率を教えていただけますか」

明示するエージェントも増えています。答えられない場合は、 商流の深さ(自分と発注元の間に何社入るか)だけでも確認してください。

直接契約

利点:
  □ 手数料がゼロ。同じ予算なら単価が上がる
  □ 発注元と直接話せる(要件の齟齬が減る)
  □ 関係が続けば、継続案件になりやすい

代償:
  □ 営業・提案・見積もりを自分でやる
  □ 契約書のレビューを自分でやる([業務委託契約書の読み方](/chapters/reading-contracts/))
  □ 請求・入金確認・督促を自分でやる([請求から回収まで](/chapters/billing-and-collection/))
  □ 未払いリスクを自分で負う

直接契約に必要な準備

□ 屋号・請求書のテンプレート(インボイス対応。[インボイス制度とフリーランス](/chapters/invoice-system/))
□ 業務委託契約書のひな形(自分から出せると強い)
□ 実績を説明できる資料(公開可否は契約で確認。[知的財産・著作権・OSS](/chapters/ip-and-copyright/))
□ 見積もりの型(工数の出し方、バッファの考え方。[単価の決め方](/chapters/pricing/))
□ 与信の確認手段(法人番号・登記情報・支払実績)

紹介・リファラル

最も成約率が高く、単価も高い経路です。

紹介が生まれる条件:
  □ 一緒に働いた人が「またこの人と働きたい」と思っている
  □ その人が、あなたが何をできるか具体的に説明できる
  □ あなたが今、受けられる状態だと知られている
「今、空きがあります」を伝えておく

紹介はタイミングの問題です。相手はあなたの稼働状況を知りません。

□ 案件が終わる1〜2ヶ月前に、過去の取引先・知人に一言伝える
□ SNS・技術記事で活動を可視化しておく
□ 前の案件を丁寧に終わらせる(終わり方が次を作る)

最良の営業は、今の案件を良い形で終えることです。

実績の見せ方

□ 公開可能な範囲を契約時に確認する([知的財産・著作権・OSS](/chapters/ip-and-copyright/))
□ 社名が出せないなら「EC 事業者向けの在庫管理基盤」のように業種と規模で表現する
□ 課題 → 打ち手 → 結果(数値)の形で書く
□ 技術スタックだけの羅列は弱い(何を解決したかが重要)

収入源の分散

1社に依存している状態 = その1社の都合で収入がゼロになる状態
1社依存は税務上のリスクにもなる
□ 収入源が1社だけ、指揮命令を受けている、稼働時間が拘束されている
  → 事業性を疑われ、給与所得と判定されるリスク([個人事業主とは何か](/chapters/what-is-sole-proprietor/))
  → 偽装請負の要素にもなる([偽装請負と常駐案件](/chapters/disguised-contracting/))

2社以上と取引があることは、事業として活動している証拠の1つになります。

現実的な分散の形:
  メイン案件(週3〜4日) + サブ案件(週1〜2日)
  メイン案件 + 単発の受託・技術顧問
  受託 + 自社サービス・情報発信(時間はかかるが、依存を減らす)

案件を選ぶ基準

金額以外の軸を持っておくと、判断が速くなります。

□ 単価([単価の決め方](/chapters/pricing/)の逆算に照らして)
□ 稼働の形(フルリモート / 出社 / 時間帯の拘束)
□ 契約類型と条件([請負・準委任・派遣](/chapters/contract-types/)・第2章)
□ 技術的な学び(1年後の自分の市場価値が上がるか)
□ 実績として出せるか
□ 支払サイトと与信
□ 人(一緒に働く相手がまともか)
学びのない案件を長く続けると、単価が上がらなくなる
同じ技術・同じ作業を3年続ける
  → 単価は据え置き
  → 市場での評価も据え置き
  → 案件が切れた時に選択肢が少ない

目先の単価と、1年後の市場価値の両方で選んでください。

営業をしない時期を作らない

□ 稼働が埋まっていても、月1回は外部と接点を持つ
□ 技術記事・登壇・OSS 活動は、遅効性の営業になる
□ 過去の取引先に定期的に近況を伝える

案件が切れてから営業を始めると、空白期間がそのまま無収入になります。

現在、エージェント経由の常駐案件1本(月75万円)で稼働が埋まっています。契約は3ヶ月ごとの更新で、すでに2年続いています。この状態のリスクは何でしょうか?

この章のまとめ

  • 経路はエージェント・直接契約・紹介。手数料と負う責任が違う
  • エージェントは途切れにくいが手数料と商流の深さが代償。手数料率は聞いてよい
  • 直接契約は単価が上がるが、営業・契約・回収・与信を自分で負う
  • 紹介が最も成約率が高い。最良の営業は、今の案件を良い形で終えること
  • 実績は課題 → 打ち手 → 結果(数値) で書く。公開可否は契約時に確認
  • 1社依存は収入リスクであり、税務・偽装請負のリスクでもある
  • 案件は金額だけでなく、稼働の形・契約条件・学び・実績化・与信・人で選ぶ
  • 営業をしない時期を作らない。切れてから始めると空白がそのまま無収入になる

参考資料

対象リンク
フリーランス・トラブル110番(厚生労働省 委託事業)https://freelance110.mhlw.go.jp/
公正取引委員会 フリーランス法(募集情報の的確表示)https://www.jftc.go.jp/
国税庁 事業所得と雑所得の区分https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/
読み終わったら記録しておくと、目次で進み具合が分かります。