フリーランスエンジニアの実務

所得控除カタログ

この部の 2 / 7 章 ・ 全体で 35 / 53 章 ・ 読了目安 22

この章を読むとできるようになること
  • 自分が使える所得控除を漏れなく拾える
  • 控除に必要な証明書を年内に集められる

経費を1万円増やすのは大変ですが、所得控除の拾い漏れは1分で数万円変わります。

そして所得控除は、経費と違って現金の支出を伴わないものも含みます。 この章は、使える控除を漏れなく拾うためのカタログです。

経費と所得控除の違い(再掲)
経費     … 事業の利益を計算する時に、売上から引くもの
所得控除 … 所得が確定した後、課税所得を計算する時に引くもの

どちらも税金を減らす効果は同じです。 「経費にならない」=「税金が減らない」ではありません。

全員が使うもの

基礎控除

合計所得金額が一定以下なら、無条件で引ける控除

2025年の税制改正で引き上げられ、所得に応じた区分が設けられています。 金額は改正で変わるため、その年の国税庁の情報で確認してください

社会保険料控除

支払った全額が控除されます。上限はありません。

□ 国民年金保険料(前納した分も、その年に支払った額を控除できる)
□ 国民健康保険料
□ 任意継続の健康保険料
□ 介護保険料
□ 国民年金基金の掛金
□ 付加保険料
□ 生計を一にする家族の分を自分が払った場合も、自分の控除にできる
家族の国民年金を代わりに払うと、自分の控除になる

学生の子や、収入の少ない配偶者の国民年金保険料を負担している場合、 支払った本人(あなた)の社会保険料控除にできます。

税率の高い人が払うほうが、世帯全体では有利です。

小規模企業共済等掛金控除

□ 小規模企業共済の掛金(月最大7万円 = 年84万円)
□ iDeCo の掛金(個人事業主は月最大6.8万円 = 年81.6万円。上限は改正あり)
□ 心身障害者扶養共済制度の掛金

全額が控除されます。フリーランスの節税で最も効果が大きい部分です(年金と、自分で作るセーフティネット)。

保険関係

生命保険料控除

区分上限(所得税)
一般生命保険料4万円
介護医療保険料4万円
個人年金保険料4万円
合計12万円
生命保険は「節税のために入るもの」ではない

年8万円超の保険料を払っても、控除は4万円が上限です。 税率30%なら、節税額は1.2万円にすぎません。

保険は保障の必要性で選んでください。控除は結果としてついてくるものです。

地震保険料控除

上限5万円(所得税)

医療費に関するもの

医療費控除

控除額 = 支払った医療費 − 保険金等で補填される金額 − 10万円
         (総所得金額等が200万円未満の場合は、その5%)

上限200万円
対象になるもの: 診療費、治療のための医薬品、通院の交通費(公共交通機関)、
                 出産費用、歯科治療(治療目的)、レーシック(治療目的)
対象にならないもの: 予防接種、健康診断(異常がなかった場合)、
                     美容目的、健康食品、自家用車のガソリン代
生計を一にする家族の分を合算できる

配偶者・子・親の医療費も、あなたが支払ったなら合算できます。

世帯で最も税率の高い人がまとめて申告するのが有利です。 医療費の領収書は、家族分をまとめて1年間保管してください。

セルフメディケーション税制

対象の医薬品の購入額が年12,000円を超える部分(上限88,000円)
※ 医療費控除との選択制(両方は使えない)
※ 健康診断・予防接種などを受けていることが条件

家族に関するもの

控除条件の概要
配偶者控除配偶者の合計所得が一定以下、かつ本人の所得が1,000万円以下
配偶者特別控除配偶者の所得が配偶者控除の範囲を超える場合の段階的な控除
扶養控除16歳以上の扶養親族。特定扶養親族(19〜22歳)は控除額が大きい
ひとり親控除・寡婦控除該当する場合
障害者控除本人・同一生計配偶者・扶養親族が障害者の場合
勤労学生控除該当する場合
控除額と要件は改正が多い

2025年の改正では、扶養控除・配偶者控除の所得要件が見直されています。 その年の要件を国税庁で確認してください。

寄附金控除(ふるさと納税)

控除額 = 寄附金額 − 2,000円(所得税・住民税を合わせた効果)
※ 控除の上限は所得と家族構成で決まる
確定申告をするなら、ワンストップ特例は使えない

ふるさと納税のワンストップ特例は、確定申告をしない人向けの制度です。

フリーランスは毎年確定申告をする → ワンストップ特例は無効になる
→ 寄附金受領証明書を集めて、確定申告で寄附金控除として申告する

ワンストップの申請書を出していても、確定申告をすると無効になります。 申告書に記載を忘れると、控除がまるごと消えます。毎年の事故のトップです。

ふるさと納税の上限額は所得が確定しないと分かりません。 フリーランスは12月に所得の見込みを立てて、その範囲で寄附するのが安全です。

その他

控除内容
雑損控除災害・盗難・横領による損失
寄附金控除国・自治体・認定 NPO 等への寄附

税額控除は別枠

所得控除とは違い、税額から直接引くのが税額控除です。効果が大きくなります。

所得控除 10万円 → 税率30%なら 3万円の減税
税額控除 10万円 → そのまま 10万円の減税
税額控除内容
住宅ローン控除年末残高の一定割合。要件が細かい(家事按分の考え方の按分と関係する)
配当控除配当所得がある場合
外国税額控除海外で課税された場合

年内にやること

□ 医療費の領収書を家族分まとめる
□ ふるさと納税の上限を試算して、12月中に寄附する
□ 小規模企業共済・iDeCo の掛金を確認する(増額は年内に)
□ 国民年金の前納・追納を検討する(控除は支払った年に効く)
□ 各種控除証明書を保管する(10〜11月に郵送・電子交付される)
控除証明書は電子データで集める

マイナポータル連携を使うと、生命保険・iDeCo・国民年金などの控除証明書を 電子データで取り込める場合があります(確定申告のやり方)。

紙の証明書を探す時間が消えるので、初回だけ設定しておく価値があります。

今年、ふるさと納税を5自治体に合計8万円行い、すべてワンストップ特例の申請書を提出しました。フリーランスなので確定申告もします。どうすべきでしょうか?

この章のまとめ

  • 所得控除は経費と同じだけ税金を減らす。拾い漏れは1分で数万円の差になる
  • 社会保険料控除は全額。家族の国民年金を払った分も自分の控除にできる
  • 小規模企業共済・iDeCo は全額控除。フリーランス最大の節税枠
  • 生命保険料控除は合計12万円が上限。節税目的で入るものではない
  • 医療費控除は家族分を合算でき、税率の高い人がまとめるのが有利
  • 確定申告をするとワンストップ特例は無効。申告書への記載を忘れない
  • 税額控除(住宅ローン控除など)は、所得控除より効果が大きい
  • 控除証明書は10〜11月に届く。マイナポータル連携で電子取得もできる

参考資料

読み終わったら記録しておくと、目次で進み具合が分かります。