フリーランスエンジニアの実務

よくある登録ミスと直し方

この部の 6 / 6 章 ・ 全体で 22 / 53 章 ・ 読了目安 20

この章を読むとできるようになること
  • 残高が合わない時の切り分け手順を持てる
  • 確定申告前に必ず見るチェック項目を把握できる

記帳のバグは、コードのバグと違って例外を投げません。 静かに帳簿に残り、決算書になり、申告書になります。

この章は、よくある壊れ方と、その見つけ方・直し方です。 確定申告の前に必ず一度、この手順で点検してください。

症状1: 預金残高が合わない

最も多く、最も重要な症状です。貸借対照表の預金残高と、通帳の残高が違う。

どこを見るか

画面: レポート → 「試算表」(月ごとの残高を見る)

┌─ レポート › 試算表 ──────────────────────────────────────┐
│  期間 [ 2026-01 ▼ ] 〜 [ 2026-12 ▼ ]     [ 表示 ]        │
├──────────────────────────────────────────────────────┤
│  勘定科目          期首残高    借方      貸方      期末残高 │
│  ───────────────────────────────────────────────    │
│  現金              30,000    12,000   18,400    23,600  │
│  普通預金         500,000 5,940,000 4,830,000 1,610,000 │ ← 通帳と一致するか
│  売掛金                 0 3,300,000 2,970,000   330,000 │ ← 未入金の請求と一致するか
│  工具器具備品     120,000   330,000   62,500    387,500 │
│  未払金                 0   880,000  968,000     88,000 │ ← 翌月引き落とし分と一致するか
└──────────────────────────────────────────────────────┘
        ↑ 科目名をクリックすると、その科目の総勘定元帳(明細)に飛べる

画面: 口座 → 「口座の一覧」(同期残高と帳簿残高の比較)

┌─ 口座 › 口座の一覧 ──────────────────────────────────────┐
│  口座名            同期された残高    freee 上の残高   差額   │
│  ─────────────────────────────────────────────      │
│  三井住友銀行        1,610,000      1,610,000       0    │ ← 一致していれば OK
│  事業用カード          −88,000        −208,000  120,000  │ ← 未処理の明細がある
└──────────────────────────────────────────────────────┘

この2画面で「どの科目が、いくらずれているか」まで絞れます。

切り分け手順

1. どの時点からずれたかを特定する
   → 月末ごとの帳簿残高と通帳残高を比べ、一致している最後の月を探す

2. その翌月の明細を1件ずつ確認する

3. 次の順で疑う
   □ 二重登録(同じ取引が2件ある)
   □ 口座振替の両側登録([口座・カード連携と「自動で経理」](/chapters/freee-sync/))
   □ 金額の入力ミス(桁・小数)
   □ 登録漏れ(同期されていない明細)
   □ 開始残高の未設定([freee の初期設定](/chapters/freee-setup/))
差額の金額そのものが手がかりになる
差額がちょうど取引1件分  → 二重登録 or 登録漏れ
差額が取引額の2倍        → 符号の逆転(収入と支出を間違えた)
差額が端数              → 振込手数料・利息の処理漏れ
差額が生活費と同額       → 事業主貸の登録漏れ

まず差額と同じ金額の取引を検索してください。8割はこれで見つかります。

症状2: 経費が実感より多い / 少ない

二重計上

□ カード利用と口座引き落としの両方を費用で登録した
□ 同期された明細と、手入力の取引が重複している
□ CSV を2回取り込んだ
□ 請求書から自動生成された取引と、手入力の取引が重複している

発見方法: 総勘定元帳で科目ごとに明細を開き、同額・同日の並びを探す

計上漏れ

□ プライベート資金で払った経費を登録していない
□ 家事按分を計上していない
□ 減価償却費を計上していない(固定資産台帳への登録漏れ)
□ 12月利用・1月引き落としの費用を未払金にしていない
計上漏れは「余分に税金を払う」形で表に出ない

経費の計上漏れは、税務署から指摘されません。払いすぎた税金は自分で気づくしかないからです。

決算前に、次を必ず確認してください。

□ 固定資産台帳に、今年買った10万円以上のものが全部あるか
□ 家事按分の対象科目が全部計上されているか
□ プライベート資金で払った経費を拾えているか

症状3: 売掛金が消えない

□ 入金額と請求額の差(源泉徴収・振込手数料)を処理していない([請求書・売掛金・入金消込](/chapters/freee-invoicing/))
□ 入金を新規の売上として登録してしまい、売掛金が残った
□ 請求書を二重に発行した
□ 値引き・相殺があったのに、請求額のまま計上している

発見方法: 取引先タグごとに売掛金の残高を出し、 未入金の請求書と突き合わせる

「入金を売上として登録」は二重計上の典型
12月: 請求時に「売掛金 / 売上高」を登録
 1月: 入金明細を見て、また「普通預金 / 売上高」を登録
     → 売上が2倍。売掛金は残ったまま

入金明細は必ず「消込」として処理してください。 新規の収入取引として登録してはいけません。

症状4: 税区分が間違っている

課税事業者(特に本則課税)の場合、消費税額に直結します。

□ 海外サービス(AWS の一部・GitHub など)の税区分
□ 保険料・利息・税金(不課税・非課税)
□ 給与(対象外)
□ 免税事業者からの仕入れ(経過措置の割合)
免税事業者なら気にしすぎなくてよい

免税事業者・2割特例・簡易課税では、仕入側の税区分は納税額に影響しません (売上の税区分は影響します)。

本則課税に切り替えるタイミングで、過去の運用も見直す必要が出てきます(2割特例・簡易課税・本則課税)。

症状5: 期ズレ

□ 12月納品・1月入金の売上を、1月に計上している
□ 12月利用・1月引き落としの経費を、1月に計上している
□ 年払いの費用を全額その年の経費にしている(短期前払費用の要件を満たさない場合)

発見方法: 12月と1月の明細を並べて、どちらの年に属するかを1件ずつ判定する。

直し方

状況対処
未決済のまま・申告前取引を編集・削除する
誤って重複登録した片方を削除する
科目を間違えた取引を編集して科目を変える
前年分の間違いに気づいた(税額が増える)修正申告をする
前年分の間違いに気づいた(税額が減る)更正の請求をする(原則5年以内)
申告済みの年度は帳簿を勝手に書き換えない

申告済みの年の帳簿を直しても、提出した申告書は変わりません。 帳簿と申告書が食い違う状態が生まれます。

前年分の誤りに気づいたら、修正申告または更正の請求という正式な手続きで直します。 自主的な修正申告は、税務調査で指摘されるより加算税が軽くなります

申告前チェックリスト

【残高】
□ 預金残高が通帳と一致している
□ 現金残高が実際の手元と一致している(現金を使っている場合)
□ 売掛金の残高=未入金の請求書の合計
□ 未払金の残高=1月以降に引き落とされるカード利用分の合計

【計上】
□ 12月納品・1月入金の売上を計上した
□ 12月利用・1月引き落としの経費を未払金で計上した
□ 家事按分を計上した(根拠のメモも残した)
□ 今年買った10万円以上の資産が固定資産台帳にある
□ 減価償却費が計上されている
□ プライベート資金で払った経費を拾った
□ プライベート口座に入金された売上が無いか確認した

【整合】
□ 取引先ごとの年間売上と、支払調書・契約書が整合している
□ 雑費の割合が高くなっていない
□ 事業主貸に、経費にできるものが紛れていない
□ 貸借対照表の左右が一致している

【添付・提出】
□ 控除証明書(社会保険・生命保険・小規模企業共済・iDeCo)が揃っている
□ 源泉徴収された金額の合計を把握している
□ e-Tax の送信準備ができている(65万円控除の要件)

12月31日時点の帳簿上の預金残高が、通帳より 42,900円 多くなっています。12月のカード引き落とし額が 42,900円 でした。何が起きている可能性が高いでしょうか?

この章のまとめ

  • 記帳のバグは例外を投げない。自分で点検するしかない
  • 預金残高の不一致が最重要の症状。一致している最後の月を探して範囲を絞る
  • 差額と同じ金額の取引を検索すれば、8割の原因は見つかる
  • 二重計上の典型は、カード利用と引き落としの両方を費用にすることと、 入金を新規の売上として登録すること
  • 計上漏れは誰も指摘してくれない。固定資産・家事按分・プライベート払いを必ず確認
  • 前年分の誤りは、修正申告(税額が増える)/更正の請求(税額が減る) で直す
  • 自主的な修正申告は、調査で指摘されるより加算税が軽い
  • 申告前チェックリストを毎年回す。残高・計上・整合・添付の4区分

参考資料

対象リンク
国税庁 確定申告を間違えたときhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2026.htm
国税庁 No.2024 修正申告https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2026.htm
freee ヘルプセンターhttps://support.freee.co.jp/
読み終わったら記録しておくと、目次で進み具合が分かります。