減価償却
この部の 5 / 7 章 ・ 全体で 27 / 53 章 ・ 読了目安 24 分
- 減価償却が必要な理由を説明できる
- PC を買った年の経費計上額を自分で計算できる
- 売却・除却時の処理を理解できる
40万円の PC を買った年、経費になるのは10万円だけです。
理由はこうです。その PC は1年で消えるものではなく、4年間使って売上を生みます。 だから費用も4年に分けて計上する——これが減価償却の考え方です。
費用は、それが貢献する期間に配分する(費用収益対応の原則)
対象になるもの
□ 取得価額が10万円以上
□ 使用可能期間が1年以上
□ 時の経過とともに価値が減るもの
対象になる: PC、サーバー、カメラ、車、机、エアコン、ソフトウェア(無形固定資産)
対象にならない: 土地(価値が減らない)、10万円未満のもの、1年以内に使い切るもの
取得価額に含めるもの
本体価格だけではありません。
取得価額 = 購入代金 + 引取運賃 + 設置費用 + 事業で使うために直接かかった費用
例: PC 本体 280,000 + 送料 2,000 + 初期設定を外注 20,000 = 302,000円
→ 30万円を超えるため、少額特例([10万・20万・30万の壁](/chapters/asset-thresholds/))が使えなくなる
299,000円 → 少額減価償却資産の特例(青色)でその年に全額経費
300,000円 → 通常の減価償却(4年に分けて計上)
判定は付随費用を含めた額です。送料や設置費で境界を超えることがあります。
耐用年数
法律で資産ごとに決まっています(法定耐用年数)。
| 資産 | 耐用年数 |
|---|---|
| パソコン(サーバー用を除く) | 4年 |
| サーバー用のコンピュータ | 5年 |
| デジタルカメラ・撮影機材 | 5年 |
| 事務机・椅子(金属製) | 15年 |
| 事務机・椅子(金属製以外) | 8年 |
| 冷暖房機器 | 6年 |
| 自動車(普通車) | 6年 |
| 自動車(軽自動車) | 4年 |
| ソフトウェア(自社利用) | 5年 |
| 建物・建物附属設備 | 構造・用途により大きく異なる |
計算方法(定額法)
個人事業主の法定償却方法は定額法です。
年間の償却額 = 取得価額 × 定額法の償却率
(耐用年数4年 → 償却率 0.250)
(耐用年数5年 → 償却率 0.200)
(耐用年数6年 → 償却率 0.167)
例: 4月に40万円の PC を購入(事業専用)
年間の償却額 = 400,000 × 0.250 = 100,000円
初年度は月割り(取得した月から12月まで = 9ヶ月)
100,000 × 9/12 = 75,000円
1年目: 75,000
2年目: 100,000
3年目: 100,000
4年目: 100,000
5年目: 24,999 ← 残り(備忘価額として1円を残す)
帳簿上、資産が「まだ存在している」ことを示すため、1円を残します(備忘価額)。 処分・売却した時に、この1円を落とします。
事業使用割合がある場合
取得価額 400,000円、事業使用割合 80%、耐用年数4年
年間の償却額 = 400,000 × 0.250 = 100,000
経費にできる額 = 100,000 × 80% = 80,000円
中古で買った場合
中古資産は、残りの使用可能期間で償却します。
簡便法:
法定耐用年数を全部経過している場合
→ 法定耐用年数 × 20%
一部経過している場合
→ (法定耐用年数 − 経過年数) + 経過年数 × 20%
※ 計算結果が2年未満なら 2年、端数は切り捨て
例: 3年落ちの中古 PC(法定4年)
(4 − 3) + 3 × 0.2 = 1 + 0.6 = 1.6年 → 2年
中古の車を事業用に買う節税話は、この仕組みを使ったものです。 ただし事業に必要な資産であることが前提です。
売却・除却したとき
廃棄した(除却)
未償却残高 120,000円の PC を廃棄
借方: 固定資産除却損 120,000 貸方: 工具器具備品 120,000
売却した
個人事業では、事業用資産の売却は原則として「譲渡所得」になります (事業所得ではありません)。
譲渡所得 = 売却額 − 未償却残高 − 譲渡費用(− 特別控除50万円)
「PC を10万円で売ったから、雑収入10万円」——これは誤りです。
事業用の固定資産を売った場合は譲渡所得として計算し、 確定申告書の譲渡所得の欄に記載します(年間50万円の特別控除があるため、 少額なら税額が出ないことが多い)。
会計ソフトでは、売却の処理を専用の画面から行います。
開業費という特殊な資産
開業前に使った準備費用は、開業費としてまとめて資産計上できます。
対象になるもの: 開業前の市場調査、名刺・Web サイト制作、打ち合わせの交通費、
事務用品、開業のための研修費 など
対象にならないもの: 10万円以上の資産(減価償却の対象になる)、仕入れ、敷金
□ 開業費は「繰延資産」で、償却期間は5年(60ヶ月)が原則
□ ただし個人事業主は「任意償却」ができる
→ 好きな年に、好きな額を経費にできる(全額を初年度でも、数年に分けてもよい)
1年目: 売上が少ない → 開業費を償却しない(赤字を膨らませない)
3年目: 所得が伸びた → 開業費を全額償却して所得を圧縮
税率が高い年に使うのが合理的です。フリーランスが使える数少ない 「タイミングを選べる経費」なので、覚えておいてください。
固定資産台帳
減価償却は複数年にまたがるため、台帳が正本になります。
□ 資産名・取得日・取得価額
□ 耐用年数・償却方法・償却率
□ 事業使用割合
□ 期首の未償却残高・当期償却額・期末の未償却残高
会計ソフトに登録すれば毎年自動計算されます。登録漏れの資産は永久に経費になりません。
9月に、税込33万円のノートPCと、税込2万円の外付けキーボードを購入しました(免税事業者・税込経理、事業使用割合100%)。PCの耐用年数は4年です。この年の減価償却費はいくらになるでしょうか?
この章のまとめ
- 減価償却は「費用を、貢献する期間に配分する」仕組み
- 対象は10万円以上・使用可能期間1年以上の資産
- 取得価額には送料・設置費用などの付随費用を含める。境界を超えることがある
- 個人事業の法定償却方法は定額法。PC の耐用年数は4年
- 初年度は月割り。12月に買えば1ヶ月分しか経費にならない
- 事業使用割合がある場合は、償却額にその割合を掛ける
- 中古資産は簡便法で耐用年数が短くなる(最低2年)
- 事業用資産の売却は譲渡所得(雑収入ではない)
- 開業費は任意償却。税率が高い年に使えるので、タイミングを選べる
- 固定資産台帳が正本。登録漏れの資産は永久に経費にならない
参考資料
| 対象 | リンク |
|---|---|
| 国税庁 No.2100 減価償却のあらまし | https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm |
| 国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表 | https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm |
| 国税庁 No.2108 中古資産の耐用年数 | https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2108.htm |
| 国税庁 No.3105 譲渡所得の対象となる資産 | https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3105.htm |