決算整理でやること
この部の 7 / 7 章 ・ 全体で 16 / 53 章 ・ 読了目安 20 分
- 期末にしかできない処理を一覧で把握できる
- 決算整理の抜けが税額にどう響くか説明できる
日々の記帳を終えても、それだけでは決算書になりません。 期末にしかできない処理が残っています。これを決算整理といいます。
決算整理を飛ばすと、経費の計上漏れ(=払わなくていい税金を払う)か、 計上しすぎ(=後で追徴される)のどちらかになります。
この章は、12月31日から3月15日の間にやることの全体像です。
決算整理でやること
□ 1. 売掛金・買掛金・未払金の計上(期ズレの処理)
□ 2. 前払費用・前受金の振替
□ 3. 減価償却費の計上
□ 4. 家事按分の計上
□ 5. 棚卸(在庫がある場合)
□ 6. 貸倒引当金の計上(青色申告の場合)
□ 7. 各残高の照合(預金・売掛金・未払金)
□ 8. 事業主貸・事業主借の確認
上から順に見ていきます。
1. 期ズレの処理
現金主義と発生主義で扱った内容を、期末にまとめて確認します。
| 確認 | 処理 |
|---|---|
| 12月に納品済みで未入金の案件 | 売掛金 / 売上高 |
| 12月に受けたサービスで支払いが1月 | 費用 / 未払金 |
| 12月に受け取った着手金 | 前受金へ振替(売上から外す) |
1月の入出金明細には、12月分の取引の決済が並んでいます。
1月の入金 → 前年12月に売上計上したか?
1月の引き落とし → 前年12月の利用分が含まれていないか?
1月の明細を上から見ていくのが、最も漏れの少ない方法です。
2. 前払費用・前受金
□ 年払いした費用に、翌年分が含まれていないか
→ 前払費用に振り替える(短期前払費用の特例を継続適用しているなら不要)
□ 受け取った入金に、まだ提供していない役務の対価がないか
→ 前受金に振り替える
3. 減価償却費の計上
10万円以上の資産(PC・機材・車など)について、その年の償却額を計算します。
例: 3月に取得した 30万円の PC(耐用年数4年、定額法、事業使用割合100%)
年間の償却額 = 300,000 × 0.250 = 75,000
今年の償却額 = 75,000 × 10ヶ月 / 12ヶ月 = 62,500
借方: 減価償却費 62,500 貸方: 工具器具備品 62,500
計算の詳細は減価償却で扱います。 青色申告決算書の3ページ目に、資産ごとの明細を書く欄があります。
減価償却は複数年にわたります。去年の未償却残高が分からないと今年の計算ができません。
会計ソフトの固定資産台帳に登録しておけば自動で計算されます。 登録を忘れた資産は、永久に償却されません(=経費になりません)。
4. 家事按分の計上
家賃・電気代・通信費などを、事業使用割合で按分して計上します。
毎月按分する方法 … 月ごとに 30% を計上
期末にまとめる方法 … 1年分の合計 × 30% を12月31日付で計上
どちらでも構いません。期末にまとめるほうが、按分率の見直しがしやすいので、 実務では後者が多く使われます。
借方: 地代家賃 360,000 貸方: 事業主借 360,000
借方: 水道光熱費 48,000 貸方: 事業主借 48,000
借方: 通信費 72,000 貸方: 事業主借 72,000
按分率の根拠は、この時点で必ずメモに残してください(家事按分の考え方)。
5. 棚卸
物販・ハードウェアの在庫がある場合のみです。
売上原価 = 期首棚卸高 + 当期仕入高 − 期末棚卸高
在庫として残っているものは経費になりません。 12月31日時点の在庫を数え、棚卸表を作って保存します(7年保存)。
受託開発・準委任のみのエンジニアには通常発生しません。
6. 貸倒引当金
青色申告なら、期末の売掛金等の残高に対して、 一定割合(一般的には5.5%)を貸倒引当金として経費にできます。
例: 期末の売掛金 3,000,000円
借方: 貸倒引当金繰入 165,000 貸方: 貸倒引当金 165,000
(翌年に全額を戻し入れる)
翌年に戻し入れるので「1年分の先送り」に過ぎませんが、 売掛金が毎年同水準なら、その分だけ課税の繰り延べが続きます。
使うかどうかは任意です。会計ソフトの決算ステップで選べます。
7. 残高の照合
ここが最重要です。帳簿が現実と合っているかを確認します。
| 帳簿の科目 | 突き合わせる相手 |
|---|---|
| 普通預金 | 12月31日の通帳残高 |
| 現金 | 実際の手元現金(小口現金を使っている場合) |
| 売掛金 | 未入金の請求書の合計 |
| 未払金 | 1月以降に引き落とされるカード明細の合計 |
| 借入金 | 金融機関の返済予定表の残高 |
差額が出たら、原因を特定してください。
よくある原因:
□ 同じ取引を2回登録した(自動同期 + 手入力)
□ 口座間の振替を両方から登録した
□ 金額の入力ミス(桁違い)
□ 開始残高の設定が間違っている([freee の初期設定](/chapters/freee-setup/))
□ 12月末の同期が反映されていない
差額を「雑損失」で消すのは、帳簿を壊す行為です。 税務調査では、原因不明の調整項目が真っ先に見られます(よくある登録ミスと直し方に切り分け手順があります)。
8. 事業主貸・事業主借の確認
□ 事業主貸に、経費にできるものが紛れていないか
(事業用口座から払った経費を、誤って事業主貸にしていないか)
□ 事業主借に、売上が紛れていないか
(プライベート口座に入金された売上を計上し忘れていないか)
取引先の1社だけ、振込先を古い個人口座のままにしていた——これは実際によくあります。
事業用口座しか同期していないと、その売上が帳簿から丸ごと落ちます。 支払調書や契約書と突き合わせて、取引先ごとに年間の売上額を確認してください。
決算のスケジュール
12月中 ・年内に払うべきものを払う(未払いの整理)
・30万円未満の資産購入を検討するなら年内([10万・20万・30万の壁](/chapters/asset-thresholds/))
・控除証明書(生命保険・iDeCo・小規模企業共済)を揃える
1月 ・1月の明細を見ながら期ズレを処理
・支払調書・源泉徴収票の受領を確認
2月上旬 ・決算整理を一通り実施
・残高照合
・決算書のドラフトを出して所得と税額を把握
2月16日〜 ・確定申告の受付開始(還付申告は1月から)
3月15日 ・申告・納付の期限
3月31日 ・消費税の申告・納付の期限
納税額を3月10日に初めて知ると、資金の準備が間に合いません。
2月上旬に決算書のドラフトを出して、納税額の見込みを立ててください。 そこで初めて「予定納税の還付がある」「振替納税にすれば4月まで猶予がある」といった 選択肢が意味を持ちます(納税カレンダーと資金繰り)。
決算作業中、貸借対照表の普通預金が実際の通帳残高より18万円多いことに気づきました。12月に事業用口座から生活費18万円を引き出しています。何が起きている可能性が高いでしょうか?
この章のまとめ
- 決算整理は期末にしかできない処理。飛ばすと計上漏れか計上しすぎになる
- やることは8つ。期ズレ・前払前受・減価償却・家事按分・棚卸・貸倒引当金・残高照合・事業主貸借の確認
- 期ズレは1月の明細を見ながら処理するのが最も漏れが少ない
- 減価償却は固定資産台帳に登録されていない資産が永久に経費にならない
- 家事按分は期末にまとめて計上するのが実務的。根拠メモを同時に残す
- 残高照合が最重要。差額を雑損失で埋めるのは帳簿を壊す行為
- プライベート口座に入金された売上は落ちやすい。取引先ごとに年間売上を確認する
- 2月上旬に税額の見込みを出す。3月に初めて知ると資金が間に合わない
参考資料
| 対象 | リンク |
|---|---|
| 国税庁 決算の手引き(青色申告者用) | https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/ |
| 国税庁 No.5930 帳簿書類等の保存期間 | https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5930.htm |
| 国税庁 No.2210 必要経費の知識 | https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm |