フリーランスエンジニアの実務

勘定科目別ガイド(エンジニア編)

この部の 3 / 7 章 ・ 全体で 25 / 53 章 ・ 読了目安 24

この章を読むとできるようになること
  • エンジニア特有の支出を適切な科目に振れる
  • 科目選択で迷った時の優先順位を持てる

前章が「経費になるか」の話なら、この章は「どう記録するか」の話です。

エンジニア特有の支出について、科目・按分の要否・証憑の取り方を並べます。

クラウド・SaaS(最も金額が大きくなる)

支出科目の例注意点
AWS・GCP・Azure通信費ドル建ての場合、決済日のレートで円換算される
VPS・レンタルサーバー通信費年払いは前払費用の検討(現金主義と発生主義
ドメイン・SSL通信費複数年契約に注意
GitHub・CI サービス通信費 / 支払手数料
Slack・Notion・Figma支払手数料
生成 AI のサブスク支払手数料私的利用が混ざるなら按分を検討
会計ソフト支払手数料
海外サービスの証憑

海外の SaaS は領収書が Web 上の PDF です。

□ 請求書 PDF をダウンロードして保存する(電子取引データ。[証憑の保存と電子帳簿保存法](/chapters/receipts-and-records/))
□ カード明細だけで済ませない(金額の裏付けにはなるが、内容が分からない)
□ 消費税の扱いに注意(国外事業者からのサービスは「リバースチャージ」等の論点がある。
   本則課税なら要確認。免税・簡易課税・2割特例なら影響は限定的)

ハードウェア

金額(判定は税込/税抜の経理方式による)扱い
10万円未満消耗品費(その年に全額経費)
10万円以上20万円未満一括償却資産(3年均等)/少額特例/通常の減価償却
20万円以上30万円未満少額特例(青色)/通常の減価償却
30万円以上減価償却減価償却
判定は「1セット」単位で行う
  例: PC 本体 9万円 + モニタ 5万円 → それぞれ独立して使えるなら別々に判定
      PC 本体 9万円 + 専用ドック 3万円(単体で機能しない)→ 一体で判定される可能性
自宅兼用の PC は按分が必要

プライベートでも使う PC は、事業使用割合で按分します。

取得価額 24万円、事業使用割合 80%
  → 経費にできるのは 19.2万円分(減価償却の各年の額にも 80% を掛ける)

固定資産台帳に事業使用割合を登録する欄があります。

通信費

支出按分根拠の例
自宅のインターネット回線必要業務時間の割合、使用実態
携帯電話(1台を兼用)必要通話明細の業務利用比率、使用時間
業務専用のモバイル回線不要(全額)契約が業務専用であること
電話番号(事業用の050番号など)不要

学習・情報収集

支出科目注意点
技術書新聞図書費タイトルが分かる形で保存
電子書籍・有料記事新聞図書費購入履歴を保存
オンライン講座研修費業務との関連を説明できるもの
カンファレンス参加費研修費参加証・領収書
交通費・宿泊費(遠方の勉強会)旅費交通費目的と日程の記録
有料コミュニティ・技術系サブスク諸会費 / 支払手数料
資格試験の受験料研修費業務に直結するもの
資格取得費用は「業務に直結するか」で分かれる
○ 業務で使う技術の認定資格(クラウド認定など)
△ 独立して新しい分野に進むための資格
× 事業と無関係な資格

一般に、現在の業務の遂行に必要であることが説明できれば経費になります。

場所に関する費用

支出科目按分
コワーキング(月額・ドロップイン)地代家賃不要(事業利用のみなら)
レンタルオフィス地代家賃不要
自宅の家賃地代家賃必要家事按分の考え方
電気代水道光熱費必要
ガス・水道水道光熱費業務関連性の説明が難しいことが多い
事務所の火災保険損害保険料按分の対象になりうる

移動

□ 電車・バス      … 旅費交通費(IC カードの履歴 + 目的のメモ)
□ タクシー        … 旅費交通費(領収書。深夜・荷物運搬など理由を記録)
□ 出張の宿泊費    … 旅費交通費
□ 自家用車        … ガソリン代・保険・車検・駐車場を走行距離等で按分
□ 自転車         … 事業専用なら消耗品費 or 資産
車を按分するなら、記録を残す
按分の根拠になるもの:
  □ 走行距離の記録(業務 / 私用)
  □ 業務での使用日数
  □ 訪問先と日付が分かるカレンダー

記録がないと「なんとなく50%」になり、否認されやすい部分です。

対人関係

支出科目記録すべきこと
取引先との打ち合わせ(カフェ等)会議費相手・目的
取引先との会食接待交際費相手の会社名・氏名・人数・目的
手土産・お祝い接待交際費相手・理由
勉強会の懇親会接待交際費 / 研修費目的(情報収集・営業)
慶弔費接待交際費招待状・会葬礼状(領収書が出ないため)
接待交際費は真っ先に見られる

個人事業主の接待交際費に法人のような上限はありませんが、 その分事業関連性を厳しく見られます

必ず記録すること: いつ・誰と・どこで・何のために
記録が無い交際費は、私的な飲食と区別がつきません

レシートの裏に手書きするか、freee の備考欄に書いてください(取引を登録する)。

外注

□ 業務委託契約書を交わす
□ 請求書を受け取る
□ 銀行振込で払う(証跡を残す)
□ インボイス登録の有無を確認する(本則課税なら控除額に影響。第5部)
□ 源泉徴収が必要な報酬か確認する(デザイン・原稿など)

給与と判定されないよう、成果物ベースの契約にしてください勘定科目の地図)。

保険・共済

支出扱い
賠償責任保険(事業)経費(損害保険料)
事務所の火災保険経費(按分の対象になりうる)
生命保険・医療保険経費にならない → 生命保険料控除
所得補償保険一般に経費にならない(内容により所得控除の対象になる場合がある)
小規模企業共済経費にならない → 小規模企業共済等掛金控除
iDeCo同上

税金

支出扱い
個人事業税経費(租税公課)
固定資産税(事業使用分)経費(按分)
自動車税(事業使用分)経費(按分)
印紙税経費
消費税(税込経理の納付額)経費(租税公課)
所得税・住民税経費にならない(事業主貸)
加算税・延滞税・反則金経費にならない

自宅のインターネット回線(月6,000円)とスマートフォン(月9,000円)を、仕事とプライベートの両方で使っています。回線は日中の業務利用が中心、スマホは業務の連絡と私用が半々程度です。適切な処理はどれでしょうか?

この章のまとめ

  • クラウド・SaaS は金額が大きくなる。請求書 PDF を必ず保存する(カード明細だけにしない)
  • ハードウェアは10万円・20万円・30万円で扱いが変わる(10万・20万・30万の壁
  • 自宅兼用の PC は事業使用割合を固定資産台帳に登録する
  • 回線・スマホは按分が必要。専用契約なら全額
  • 接待交際費は真っ先に見られる。いつ・誰と・何のためにを必ず記録する
  • 外注は契約書・請求書・振込の3点セット。給与と判定されない形にする
  • 保険・共済は経費にならないが所得控除になるものが多い
  • 税金は個人事業税・固定資産税(事業分)・印紙税は経費、所得税・住民税は経費にならない

参考資料

対象リンク
国税庁 No.2210 必要経費の知識https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
国税庁 No.2100 減価償却のあらましhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
国税庁 No.6118 国外事業者から受けた電気通信利用役務の提供https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6118.htm
読み終わったら記録しておくと、目次で進み具合が分かります。