単価の決め方
この部の 1 / 7 章 ・ 全体で 47 / 53 章 ・ 読了目安 24 分
この章を読むとできるようになること
- 希望手取りから必要単価を逆算できる
- 見積もりに含めるべきコストを漏らさない
単価は「相場」で決めるものではありません。必要な額から逆算するものです。
欲しい手取り
→ 必要な所得
→ 必要な売上
→ 稼働できる時間で割る
→ 必要な単価
この計算をしていないと、「提示された金額」を受け入れるしかなくなります。
逆算する
Step 1: 必要な生活費
月の生活費 30万円
年間 360万円
+ 予備・貯蓄・投資 100万円
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必要な手取り 460万円
Step 2: 税と社会保険を戻す
独立する前に確かめることで見たとおり、売上のうち25〜35%が税・社会保険で消えます。
必要な手取り 460万円 ÷ (1 − 0.30) ≒ 660万円 ← 必要な事業所得
Step 3: 経費を足す
必要な所得 660万円
+ 年間の経費(PC・通信・家賃按分・書籍・ソフト) 150万円
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必要な売上 810万円
Step 4: 稼働率で割る
年間フル稼働 = 12ヶ月
現実の稼働 = 10ヶ月(案件の切れ目、体調、営業・学習の期間)
必要な月額 = 810万円 ÷ 10ヶ月 = 81万円
12ヶ月で割ると、必ず足りなくなる
810万円 ÷ 12ヶ月 = 67.5万円 ← この数字で交渉すると、
空白が1ヶ月あるだけで計画が崩れる
稼働率を織り込むこと。これが会社員の感覚から最も遠い部分です。
会社員年収との換算
フリーランスの年商 × 0.65〜0.75 ≒ 同水準の会社員年収
| フリーランスの年商 | 会社員年収の感覚 |
|---|---|
| 600万円 | 400〜450万円 |
| 840万円 | 550〜630万円 |
| 1,200万円 | 800〜900万円 |
厚生年金・退職金・有給・雇用保険を含めると、差はさらに縮まります。
時間単価で見る
月額で考えると見えないものがあります。
月80万円 / 稼働160時間 → 時間単価 5,000円
月80万円 / 稼働200時間 → 時間単価 4,000円 ← 同じ月額でも2割違う
さらに、売上にならない時間があります。
実質時間単価 = 年間所得 ÷ (稼働時間 + 営業 + 学習 + 事務 + 移動)
案件別の採算を出す
freee のメモタグに案件名を入れておくと(freee の初期設定)、 案件ごとの売上と直接経費が出せます。そこに自分の稼働時間を突き合わせます。
案件A: 480万円 / 900時間 → 5,333円/h(ただし通勤往復2時間 → 実質 4,400円/h)
案件B: 200万円 / 250時間 → 8,000円/h(フルリモート)
「単価が高い案件」と「効率が良い案件」は違います。
見積もりに含めるコスト
請負案件では、見えていないコストが必ずあります。
□ 要件定義・見積もり作成の時間
□ 打ち合わせ・報告の時間
□ 環境構築・調査の時間
□ 手戻り・仕様変更の余裕(バッファ)
□ 検収対応・修正の時間
□ 納品後の問い合わせ対応
□ 移動時間
□ 使用するツール・サービスの費用
バッファ無しの見積もりは自分を削る
「実装だけなら5日」で見積もると、打ち合わせ・修正・調査で実際は10日かかります。 差の5日は、自分の時間から無償で出ていることになります。
見積もりの実務:
作業見積もり × 1.3〜1.5 を基本とする
不確実性が高い部分は、別途見積もり or 準委任に切り替える
値上げの伝え方
継続案件の単価は、言わなければ上がりません。
タイミング:
□ 契約更新のタイミング(1〜3ヶ月前に切り出す)
□ 担当範囲が広がった時
□ 成果が明確に出た直後
伝え方:
「次回の更新にあたり、単価の見直しをご相談させてください。
現在は〇〇に加えて△△も担当しており、
□□の改善(数値)にも貢献できていると考えています。
月額 XX 万円でご検討いただけますでしょうか」
値上げ交渉の材料は、日頃の記録から作る
□ 担当範囲の変化(契約時と現在の差)
□ 定量的な成果(処理時間の改善、障害件数の減少、リリース回数)
□ 属人化している部分(自分しかできない領域)
□ 市場の相場(エージェントの提示額)
感情ではなく、事実で交渉するのが最も通ります。
消費税・インボイスと単価
□ 単価は税抜か税込かを必ず明確にする
□ インボイス登録により手取りが減る場合、単価に反映できないか交渉する([インボイス制度とフリーランス](/chapters/invoice-system/))
□ 「税込80万円」と「税抜80万円」では、年間で約96万円の差
断ることも交渉
□ 相場より明らかに低い案件を受けると、その単価が自分の基準になる
□ 安い案件で埋まると、高い案件が来た時に受けられない
□ 「今は稼働が埋まっています」は、正当かつ角の立たない断り方
最初の1件で単価を決めない
独立直後は不安から安く受けがちですが、 その取引先での単価は、後から上げにくいのが現実です。
初回 50万円 → 3年後に 80万円にするのは大変
初回 70万円 → 更新のたびに調整するほうが現実的
実績が無い時期は、単価を下げるより、範囲を狭める(短期・小さいスコープ) ほうが後に効きます。
月60万円・フルリモートの案件と、月75万円・週3日出社(片道1時間)の案件があります。どちらも月160時間の稼働です。どう比較すべきでしょうか?
この章のまとめ
- 単価は相場ではなく、必要な手取りから逆算する
- 逆算は手取り → 税と社会保険を戻す → 経費を足す → 稼働率で割る
- 12ヶ月ではなく10ヶ月で割る。空白期間を織り込む
- 会社員年収との換算は年商 × 0.65〜0.75
- 月額ではなく時間単価で見る。移動・営業・学習・事務も時間に含める
- 見積もりには打ち合わせ・調査・手戻り・検収対応を含め、1.3〜1.5倍のバッファを取る
- 値上げは言わなければ起きない。更新の1〜3ヶ月前に、事実で交渉する
- 最初の単価が基準になる。安く受けるより、範囲を狭める
参考資料
| 対象 | リンク |
|---|---|
| 中小企業庁 価格交渉・価格転嫁 | https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/ |
| 公正取引委員会 フリーランス法(買いたたきの禁止) | https://www.jftc.go.jp/ |
| 国税庁 タックスアンサー(所得税) | https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/ |
読み終わったら記録しておくと、目次で進み具合が分かります。