フリーランスエンジニアの実務

税務調査に備える

この部の 6 / 7 章 ・ 全体で 52 / 53 章 ・ 読了目安 20

この章を読むとできるようになること
  • 調査で問われることを想定した記録を残せる
  • 指摘された時のペナルティの種類を把握できる

税務調査は、悪いことをした人だけに来るものではありません。

□ 事業規模が大きくなった
□ 数字に不自然な動きがある
□ 業種として調査対象になっている
□ 何年も調査を受けていない

こうした理由で来ます。そして、きちんと記帳していれば恐れる必要はありません。 この章は、日頃の備えと当日の対応です。

調査の種類

種類内容
任意調査通常の税務調査。事前に連絡が来る。ほとんどがこれ
強制調査裁判所の令状に基づく。大規模・悪質な脱税事案
書面照会・お尋ね文書で確認される。調査の前段階のことも

個人事業主に来るのは任意調査です。事前に電話で連絡があり、日程を調整します。

日程は調整できる

「来週来ます」と言われても、仕事の都合で調整を依頼できます。 税理士に立ち会いを依頼する場合も、その旨を伝えて日程を決めます。

慌てて帳簿を作り直す時間ではなく、書類を揃えて整理する時間として使ってください。

何を見られるか

【売上】
□ 計上漏れがないか(プライベート口座への入金、現金売上)
□ 期ズレがないか(12月と1月の境目)
□ 取引先の支払調書・帳簿との整合

【経費】
□ 事業と関係のない支出が混ざっていないか
□ 家事按分の割合に根拠があるか
□ 接待交際費の相手と目的が説明できるか
□ 外注費が給与ではないか([勘定科目の地図](/chapters/account-titles/))
□ 高額な資産の処理(減価償却・少額特例)

【消費税】
□ 税区分が正しいか
□ インボイスの保存があるか(本則課税)

【帳簿・書類】
□ 帳簿が保存されているか
□ 領収書・請求書・契約書が揃っているか
□ 電子取引データが電子で保存されているか([証憑の保存と電子帳簿保存法](/chapters/receipts-and-records/))

特に見られる項目

項目なぜ見られるか
家事按分根拠が曖昧になりやすい(家事按分の考え方
接待交際費私的な飲食と区別しにくい
旅費交通費私的な旅行が混ざりやすい
雑費中身が不明になりやすい(勘定科目の地図
期末前後の取引期ズレの操作が起きやすい
外注費給与との区別、実在性
売上の計上漏れ最も重い指摘になりやすい
売上の計上漏れが最も重い

経費の否認は「その分の税金を払う」で済みますが、 売上の意図的な除外は重加算税の対象になりえます。

過少申告加算税 … 原則10%(一定額を超える部分は15%)
無申告加算税   … 原則15%(一定額を超える部分は20%)
重加算税       … 35%(無申告の場合は40%)
延滞税         … 別途、日割りで発生

プライベート口座への入金決算整理でやること)は、必ず確認してください。

日頃の備え

調査対策とは、日常の記帳そのものです。

□ 事業用口座・カードを分ける([屋号・事業用口座・事業用カード](/chapters/business-bank-account/))
□ 取引の備考に目的を書く([取引を登録する](/chapters/freee-transactions/))
□ 家事按分の根拠メモを毎年作る([家事按分の考え方](/chapters/home-office-ratio/))
□ 証憑を保存する(電子は電子のまま。[証憑の保存と電子帳簿保存法](/chapters/receipts-and-records/))
□ 残高照合を毎月行う([よくある登録ミスと直し方](/chapters/freee-mistakes/))
□ 契約書・請求書を案件ごとに整理する
「3年後の自分が説明できるか」が基準

調査は数年前の帳簿を見ます。記憶はありません

その時にあるのは、帳簿・証憑・メモだけです。

経費とは何かで書いた「面識のない調査官に説明できるか」は、 そのまま調査の場面を指しています。

当日の対応

□ 帳簿・領収書・請求書・契約書・通帳を用意する
□ 聞かれたことに、事実で答える
□ 分からないことは「確認して回答します」でよい(推測で答えない)
□ 記憶が曖昧なことを断定しない
□ 帳簿を書き換えない(絶対に)
推測で答えると、後で矛盾する

「たぶん打ち合わせだったと思います」

こう答えると、後から記録を確認して違っていた場合、 説明の信頼性が落ちます

「確認してご回答します」は、誠実な回答です。 その場を取り繕う必要はありません。

指摘を受けたら

□ 指摘の内容と根拠を確認する
□ 納得できるなら、修正申告に応じる
□ 納得できないなら、その場で合意せず、理由を説明する
□ 税理士に相談する(調査後からでも依頼できる)
□ どうしても折り合わない場合、更正処分に対して不服申立てができる
全部を受け入れる必要はない

調査官の指摘は「見解」であって、確定した処分ではありません。

根拠を持って説明できる部分は、説明してください。 家事按分の割合などは、合理的な根拠があれば認められます。

逆に、明らかな誤りは素直に修正するほうが、全体として早く終わります。

税理士の立ち会い

□ 顧問税理士がいれば、通常は立ち会う
□ いない場合でも、調査の連絡が来てから依頼できる(スポット対応)
□ 費用は数万円〜十数万円が目安

金額が大きい、争点がある、対応に不安がある場合は、 費用を払ってでも依頼する価値があります。

調査が終わったら

□ 修正申告または更正処分の内容を確認する
□ 追加の納税額・加算税・延滞税を納付する
□ 指摘された点を、翌年以降の記帳に反映する

指摘は、帳簿の改善点のリストでもあります。同じ指摘を2度受けないでください。

税務調査の事前連絡がありました。帳簿は会計ソフトで付けていますが、接待交際費の一部に相手先や目的のメモがありません。調査までの2週間で何をすべきでしょうか?

この章のまとめ

  • 調査は悪いことをした人だけに来るものではない。規模・年数・業種でも選ばれる
  • 個人事業主に来るのは任意調査。事前連絡があり、日程は調整できる
  • 特に見られるのは家事按分・接待交際費・旅費・雑費・期末前後・外注費・売上の計上漏れ
  • 売上の計上漏れが最も重い。プライベート口座への入金を必ず確認する
  • 調査対策とは、日常の記帳そのもの。備考・按分メモ・証憑・残高照合
  • 当日は事実で答える。分からないことは「確認して回答します」でよい
  • 帳簿を書き換えない。準備とは説明材料を揃えること
  • 指摘は見解であって確定ではない。根拠があれば説明する。明らかな誤りは素直に直す

参考資料

対象リンク
国税庁 税務調査手続に関する FAQhttps://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/
国税庁 加算税制度https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2026.htm
国税庁 不服申立制度https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/fufuku/
国税不服審判所https://www.kfs.go.jp/
読み終わったら記録しておくと、目次で進み具合が分かります。