会計ソフトの選び方
この部の 1 / 6 章 ・ 全体で 17 / 53 章 ・ 読了目安 12 分
- クラウド会計を使う前提が合理的な理由を説明できる
- 自分の案件構成に合うソフトを選べる
結論から書きます。クラウド会計ソフトを使ってください。
理由は節約でも流行でもなく、手作業では現実的に終わらないからです。
1年分の取引が800件あるとして:
手入力 … 1件2分として 26時間
自動同期+確認 … 1件10秒として 2時間強
そして電子帳簿保存法(証憑の保存と電子帳簿保存法)への対応、e-Tax への直接送信、 インボイス制度への対応まで含めると、自作や表計算での運用は割に合いません。
主要な3つ
| freee会計 | マネーフォワード クラウド確定申告 | やよいの青色申告 オンライン | |
|---|---|---|---|
| 入力の考え方 | 取引ベース(簿記を知らなくても入る) | 仕訳ベース(簿記の知識があると速い) | 帳簿ベース(従来の会計ソフトに近い) |
| 向いている人 | 簿記が初めて/請求書もまとめたい | 簿記が分かる/明細の精度を重視 | 白色から始める/サポート重視 |
| 請求書機能 | 標準で強い | あり | 別サービス |
| 消費税・インボイス | 対応 | 対応 | 対応 |
| スマホアプリ | 強い | あり | あり |
| 料金 | 年額プラン(機能で段階) | 年額プラン | 初年度無料プランあり |
どれを選んでも構いません。この本が freee で説明するのは、
- 簿記を知らない人が最初に触るソフトとして選ばれやすい
- 取引 → 仕訳の変換が明示的で、簿記の学習と対応づけて説明しやすい
- 請求書・申告まで1つで完結する
からです。他のソフトでも、やることは第2部で説明した簿記そのものです。
エンジニアが見るべき比較軸
1. 使っている金融機関に対応しているか
これが最優先です。連携できない口座は手入力になります。
確認するもの:
□ メインの事業用銀行口座
□ 事業用クレジットカード
□ 決済サービス(Stripe、PayPal など。海外案件があるなら特に)
□ 証券口座(事業とは無関係なら不要)
2. 請求書を発行するか
案件がエージェント経由で、請求書を相手が作ってくれる(支払通知書方式)なら、 請求書機能は不要です。直接契約が中心なら、請求書とセットのほうが楽です。
請求書を自分で出す場合に要るもの:
□ インボイス(適格請求書)の記載事項を満たすテンプレート
□ 発行した請求書から売掛金が自動で立つこと
□ 入金との消込ができること
3. API・データエクスポート
将来ソフトを乗り換える、または自分で集計したい場合に効きます。
□ 仕訳データを CSV でエクスポートできるか
□ 会計 API が公開されているか(freee は API を公開している)
□ 証憑ファイルを一括ダウンロードできるか
仕訳データは CSV で出せても、アップロードしたレシート画像の一括取り出しが 面倒なソフトがあります。
電子帳簿保存法の保存要件(証憑の保存と電子帳簿保存法)を満たすため、証憑はソフト内に置くことになります。 乗り換えを考える時は、証憑の持ち出し方法を先に確認してください。
4. 料金と機能の段階
安いプランでは、消費税申告・固定資産管理・請求書の一部機能が使えないことがあります。
初年度: 免税事業者なら安いプランで足りることが多い
2年目以降: インボイス登録・消費税申告が必要になったらプラン変更を検討
表計算で済ませてはいけない理由
× 貸借対照表を自力で作る必要がある(65万円控除の要件)
× 電子取引データの保存要件を自力で満たす必要がある
× e-Tax 送信の形式に自分で変換する必要がある
× 減価償却の計算・固定資産台帳の管理を自力でやる
× 消費税の税区分ごとの集計を自力でやる
エンジニアほど「自分で作れそう」と思いますが、割に合いません。 毎年の税制改正に自分で追随することになります。
年の途中でソフトを乗り換えると、同じ年のデータが2つのソフトに分かれます。
決算時に統合する作業が発生し、残高が合わなくなる原因になります。 乗り換えるなら1月1日から、前年分の申告が終わってからにしてください。
決められない時の判断
簿記が初めて/請求書も出す → freee
簿記が分かる/仕訳を直接いじりたい → マネーフォワード
まず無料で始めたい/電話サポート重視 → やよい
どれも無料お試し期間があります。実際に自分の口座を1つ繋いで、 明細が取れるかを確かめてから決めてください。
来年からフリーランスになります。案件はエージェント経由が中心で、請求書はエージェントが作成する方式(支払通知書)です。簿記は未経験。会計ソフト選びで最も重視すべき点はどれでしょうか?
この章のまとめ
- クラウド会計ソフトを使う。手入力では現実的に終わらない
- 選択肢は freee・マネーフォワード・やよい。やることはどれでも同じ
- 最優先の比較軸は「使う金融機関に対応しているか」
- 請求書を自分で出すかどうかで、必要な機能が変わる
- 乗り換えを考えるなら、証憑ファイルの持ち出し方法を先に確認する
- 表計算での自作は、BS 作成・電帳法・e-Tax・減価償却・消費税集計をすべて自前でやることになる
- 乗り換えるなら1月1日から。年の途中で切り替えると残高が合わなくなる
参考資料
| 対象 | リンク |
|---|---|
| freee会計 | https://www.freee.co.jp/ |
| マネーフォワード クラウド確定申告 | https://biz.moneyforward.com/tax_return/ |
| 弥生 やよいの青色申告 オンライン | https://www.yayoi-kk.co.jp/aoiro/ |
| 国税庁 e-Tax | https://www.e-tax.nta.go.jp/ |