請求から回収まで
この部の 3 / 7 章 ・ 全体で 49 / 53 章 ・ 読了目安 20 分
- 請求書に必要な記載事項を満たせる
- 未入金の督促を段階的に進められる
納品しても、入金されるまで売上は完了していません。
そして未入金は、放置すると回収が難しくなります。 この章は、請求の作り方から、督促、最悪の場合の貸倒れ処理までです。
請求書に書くこと
□ 発行日
□ 請求先(正式名称。株式会社の位置まで正確に)
□ 自分の氏名・屋号・住所・連絡先
□ 登録番号(インボイス登録している場合。T + 13桁)
□ 取引年月日
□ 取引内容(案件名・作業内容・期間)
□ 税率ごとに区分した対価の額と適用税率
□ 税率ごとに区分した消費税額
□ 合計金額
□ 源泉徴収税額(対象の報酬の場合)
□ 振込先(銀行・支店・種別・口座番号・口座名義(カナ))
□ 支払期限
□ 振込手数料の負担についての記載
2026-001, 2026-002, ...
入金消込(請求書・売掛金・入金消込)と督促のときに効きます。 「〇月分の請求」ではなく「請求書番号 2026-014 の件」と言えると、 相手の経理も探しやすくなります。
送るタイミングと相手
□ 締め日の直後に送る(月末締めなら、翌月1〜5営業日)
□ 送り先は「担当者」ではなく、経理の受付ルートを確認しておく
□ 請求書の受領方法(メール / PDF / 専用システム / 郵送)を最初に聞く
多くの企業は締め日で支払処理をまとめます。 1日遅れて締めに乗らないと、支払いは翌月に回ります。
カレンダーに「請求書を出す日」を固定してください(月次ルーティン)。
入金の確認
□ 入金予定日を一覧で管理する(会計ソフトの未決済取引で足りる)
□ 入金額が請求額と一致しているか確認する
→ 源泉徴収・振込手数料の差([請求書・売掛金・入金消込](/chapters/freee-invoicing/))
□ 一致しない場合、原因を特定してから消し込む
未入金への対応
段階を踏みます。いきなり強い言葉を使わないこと。
1. 期日の翌営業日: 事務的な確認
「お世話になっております。
請求書番号 2026-014(金額 XXX 円、支払期日 X月X日)につきまして、
本日時点で入金の確認ができておりません。
行き違いでしたら申し訳ありません。ご確認いただけますでしょうか」
攻撃的にならないこと。事務処理の漏れであることがほとんどです。
2. 1週間後: 担当者と経理の両方へ
□ 担当者にも状況を伝える(経理に届いていない可能性がある)
□ 支払予定日を明確に回答してもらう
3. 2週間〜1ヶ月: 書面での督促
□ メールで、請求内容・期日・未入金である事実・回答期限を明記
□ 「支払いが確認できない場合、しかるべき対応を検討します」と伝える
□ やり取りをすべて保存する
4. それ以上: 外部の力を使う
| 手段 | 内容 |
|---|---|
| フリーランス・トラブル110番 | 弁護士に無料相談。まずここ |
| 公正取引委員会・中小企業庁への申出 | 支払遅延はフリーランス法違反になりうる(フリーランス新法と下請法) |
| 内容証明郵便 | 請求の意思を証拠として残す |
| 支払督促 | 裁判所を通じた簡易な手続き |
| 少額訴訟 | 60万円以下の金銭請求。1日で終わることが多い |
| 民事調停・通常訴訟 | 金額が大きい場合 |
フリーランス法により、受領日から60日以内の支払期日設定が義務づけられています (フリーランス新法と下請法)。
□ 支払期日を過ぎている
□ そもそも60日を超える支払サイトになっている
どちらも申出の対象になりえます。遠慮する必要はありません。
時効
債権の消滅時効は、原則として「権利を行使できることを知った時から5年」
放置すると請求できなくなります。請求や交渉の記録を残すことが重要です。
貸倒れの処理
回収できないことが確定した場合、貸倒損失として経費にできます。
貸倒れとして処理できる主なケース:
□ 法律上の貸倒れ(会社更生法・民事再生法などによる債権の切捨て)
□ 事実上の貸倒れ(債務者の資産状況から全額回収不能が明らかな場合)
□ 形式上の貸倒れ(取引停止後1年以上経過した場合など、一定の要件を満たすとき)
借方: 貸倒損失 300,000 貸方: 売掛金 300,000
貸倒れの要件は厳格です。回収不能であることの客観的な証拠が必要です。
□ 督促の記録
□ 相手の状況を確認した記録
□ 法的手続きの記録
処理する前に、要件を国税庁の情報で確認してください。 なお、青色申告なら貸倒引当金で事前に備えることもできます(決算整理でやること)。
予防する
回収は、契約と与信の段階で8割決まります。
□ 契約書に支払期日・遅延損害金を明記する([業務委託契約書の読み方](/chapters/reading-contracts/))
□ 初回の取引は、金額を抑えるか着手金をもらう
□ 長期・高額の案件は、マイルストーンで分割請求する
□ 相手の与信を確認する(登記情報、支払実績、業界での評判)
□ 支払遅延が一度あった相手とは、条件を見直す
「初めてのお取引となりますので、着手金として30%を先にいただき、
残りを納品後にご請求する形でお願いできますでしょうか」
受託開発では一般的な条件です。特に初回取引と、 長期案件では、キャッシュフローの面でも有効です。
納品して検収も完了した案件(60万円)の支払期日が2週間過ぎています。担当者に2回メールしましたが「経理に確認します」の返答のみで、具体的な支払予定日の回答がありません。次にすべきことは何でしょうか?
この章のまとめ
- 請求書にはインボイスの記載事項・振込先・支払期限・手数料負担を明記する
- 請求書番号を通し番号にすると、消込と督促が楽になる
- 締め日に間に合わないと支払いが1ヶ月ずれる。請求日をカレンダーに固定する
- 未入金は段階を踏んで督促する。最初は事務的な確認から
- 支払遅延はフリーランス法の問題になりうる。相談窓口を遠慮なく使う
- 回収不能なら貸倒損失にできるが、要件は厳格。証拠が要る
- 回収は契約と与信で8割決まる。着手金・分割請求・遅延損害金の明記が予防になる
参考資料
| 対象 | リンク |
|---|---|
| フリーランス・トラブル110番 | https://freelance110.mhlw.go.jp/ |
| 公正取引委員会 フリーランス法 | https://www.jftc.go.jp/ |
| 裁判所 民事事件の手続案内 | https://www.courts.go.jp/ |
| 国税庁 No.2320 貸倒損失 | https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2320.htm |