フリーランスエンジニアの実務

請求書・売掛金・入金消込

この部の 5 / 6 章 ・ 全体で 21 / 53 章 ・ 読了目安 22

この章を読むとできるようになること
  • 請求 → 売掛金 → 入金の流れを freee 上で完結できる
  • 源泉徴収・振込手数料の差額を正しく消し込める

請求書は「送って終わり」ではありません。

請求書を発行 → 売掛金が立つ → 入金される → 売掛金を消し込む
                                ↑
                    ここで金額が合わないことが多い

源泉徴収振込手数料のせいで、請求額と入金額はほぼ一致しません。 この章は、その差額を正しく処理する方法です。

請求書に書くこと

インボイス制度に対応する場合、適格請求書の記載事項を満たす必要があります (詳細はインボイス制度とフリーランス)。

□ 適格請求書発行事業者の氏名または名称、および登録番号(T + 13桁)
□ 取引年月日
□ 取引内容(軽減税率の対象ならその旨)
□ 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)、および適用税率
□ 税率ごとに区分した消費税額等
□ 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

登録していない場合(免税事業者)は、登録番号を書いてはいけません。 消費税額を記載すること自体は禁止されていませんが、 適格請求書と誤認させる書き方は避けてください

請求書に入れておくと事故が減る項目
□ 振込先(銀行・支店・口座種別・口座番号・口座名義)
□ 支払期限
□ 振込手数料の負担者(「振込手数料は貴社ご負担でお願いします」など)
□ 案件名・契約番号(相手の経理が照合しやすい)
□ 発行者の連絡先

振込手数料の負担者は、契約書か請求書に明記しておくと揉めません(業務委託契約書の読み方)。

freee で請求書を作る

1. 請求書を作成(取引先・品目・金額・源泉徴収の有無を指定)
2. 発行すると、自動で「収入 / 未決済」の取引が作られる
   → 仕訳は「売掛金 / 売上高」
3. PDF またはメールで送付
4. 入金されたら、同期された明細と請求書を突き合わせて消し込む

画面: 取引 → 「請求書」→「請求書を作成」

┌─ 取引 › 請求書の作成 ────────────────────────────────────┐
│  取引先    [ 株式会社マルマル商事 ▼ ]                      │ ← 敬称・宛名は取引先設定から
│  件名      [ システム開発業務(2026年8月分)           ]  │
│  請求日    [ 2026-08-31 ]   支払期限 [ 2026-09-30 ]      │ ← 受領日から60日以内
│  請求書番号 [ 2026-014 ]                                  │ ← 通し番号にする
│                                                          │
│  ─ 品目 ────────────────────────────────────────    │
│  内容              数量  単価      税区分      金額       │
│  [開発業務 8月分 ] [1] [300,000] [課税売上10%] 300,000   │
│  + 行を追加                                              │
│                                                          │
│  ─ 金額 ────────────────────────────────────────    │
│  小計                                        300,000     │
│  消費税(10%)                                  30,000     │ ← 税率ごとに区分して表示
│  源泉徴収税額   ☑ 計算する                    −30,630     │ ← 対象の報酬のみ
│  合計                                        299,370     │
│                                                          │
│  備考 [ 振込手数料は貴社にてご負担をお願いいたします。  ]  │
│  振込先 [ 〇〇銀行 △△支店 普通 1234567 フ-ワ-クス ヤマダタロウ ] │
│                                                          │
│         [ 下書き保存 ]        [ 発行してメールで送る ]     │
└──────────────────────────────────────────────────────┘
   ↑ 登録番号(T + 13桁)は事業所設定から自動で印字される
源泉徴収のチェックを毎回確認する

freee は取引先ごとに源泉徴収の設定を覚えます。

受託開発の報酬 → 通常は源泉徴収の対象外(チェックを外す)
原稿料・講演料 → 対象(チェックを入れる)

取引先が同じでも、案件によって扱いが変わることがあります(源泉徴収と報酬)。 発行前に金額の内訳を必ず見てください。

請求書から取引が自動生成されるのが、請求書機能を使う最大の利点です。 別途手で売掛金を立てる必要がありません。

源泉徴収がある場合

報酬が源泉徴収の対象なら、**10.21%**が引かれて振り込まれます(源泉徴収と報酬)。

請求(税抜300,000円+消費税30,000円、源泉徴収あり)

  請求額合計          330,000
  源泉徴収税額        −30,630   ← 税抜金額 300,000 × 10.21%
  ────────────────────────
  振込額              299,370
源泉徴収の計算基礎は「税抜」でよい

請求書で報酬額と消費税額を明確に区分していれば、 源泉徴収の対象は税抜の報酬額で計算できます。

区分していないと、税込金額に対して源泉徴収されることがあり、 手取りが減ります(最終的には確定申告で精算されますが、資金繰りには影響します)。

請求書では必ず税抜金額と消費税額を分けて書いてください。

仕訳の形

請求時
  借方: 売掛金 330,000    貸方: 売上高 300,000
                                仮受消費税 30,000(税抜経理の場合)

入金時
  借方: 普通預金 299,370  貸方: 売掛金 330,000
        仮払税金  30,630

freee では、請求書作成時に源泉徴収を有効にすると、この処理が自動化されます。

振込手数料が引かれた場合

請求 330,000円 → 入金 329,450円(振込手数料 550円が引かれた)

  借方: 普通預金   329,450  貸方: 売掛金 330,000
        支払手数料     550
差額を放置すると売掛金が消えない

入金額だけで消し込むと、売掛金に550円が残り続けます。 これが積み重なると、決算時に「原因不明の売掛金残高」になります。

freee では消込時に「差額の勘定科目」を指定できます。 振込手数料なら「支払手数料」を選んでください。

消込の実務

画面: 取引 → 「自動で経理」→ 入金明細の行で「消し込む」

┌─ 入金 299,370 円の消し込み ──────────────────────────────┐
│  この入金に対応する未決済の取引を選んでください               │
│                                                          │
│  ☑ 2026-08-31  株式会社マルマル商事  請求 330,000        │ ← 請求額
│  ☐ 2026-07-31  株式会社バツバツ      請求 220,000        │
│                                                          │
│  ─ 差額の処理 ────────────────────────────────────  │
│  請求額 330,000 − 入金額 299,370 = 差額 30,630           │
│                                                          │
│  差額の勘定科目 [ 仮払税金 ▼ ]                            │ ← 源泉徴収分
│  (振込手数料が引かれている場合は「支払手数料」)             │
│                                                          │
│                                     [ 消し込む ]         │
└──────────────────────────────────────────────────────┘
1. 入金明細が同期される
2. 「自動で経理」画面で、その明細を対応する未決済取引に紐づける
3. 金額が違う場合、差額の扱いを指定する
     源泉徴収 → 仮払税金(または事業主貸)
     振込手数料 → 支払手数料
     一部入金 → 残額を売掛金に残す
取引先タグを必ず付ける

取引先タグを付けておくと、「〇〇社の売掛金残高」がすぐ出せます。

□ 未入金の請求書がどれか
□ 支払サイトが守られているか
□ 特定の取引先に売上が偏っていないか

回収管理(請求から回収まで)とリスク管理の両方に効きます。

複数月分をまとめて請求する場合

準委任で「3ヶ月分をまとめて請求」というケースがあります。

売上の計上は、あくまで役務の提供が完了した月ごと([現金主義と発生主義](/chapters/accrual-basis/))

  10月分: 10月31日に売掛金 / 売上高
  11月分: 11月30日に売掛金 / 売上高
  12月分: 12月31日に売掛金 / 売上高
  → 請求書は1月にまとめて発行してもよい

特に年末をまたぐ場合、請求書の日付ではなく役務提供の月で計上してください。

エージェント経由の場合

エージェントが支払通知書を発行する方式では、自分から請求書を出さないことがあります。

□ 支払通知書の金額・源泉徴収額・手数料の内訳を確認する
□ 売上は「エージェントから受け取る額」ではなく、契約上の報酬額で計上する
    (エージェント手数料が差し引かれている場合、手数料は支払手数料として経費計上)
□ インボイス制度では「仕入明細書」方式が使われることがある
    → 自分の登録番号が正しく記載されているかを確認する
手数料が引かれた後の金額を売上にしない
契約報酬 700,000円、エージェント手数料 70,000円、入金 630,000円

× 売上 630,000
○ 売上 700,000 / 支払手数料 70,000

どちらでも所得は同じですが、売上高が変わります。 売上高は消費税の課税事業者判定(1,000万円)に使う数字です(消費税の仕組み)。 過少に計上していると、判定を誤ります。

330,000円(税抜30万円+消費税3万円)の請求に対し、源泉徴収30,630円が引かれ、さらに振込手数料440円が引かれて298,930円が入金されました。消込の処理として正しいものはどれでしょうか?

この章のまとめ

  • 請求書 → 売掛金 → 入金 → 消込。freee では請求書発行で取引が自動生成される
  • インボイス登録済みなら、登録番号と税率ごとの消費税額の記載が必要
  • 未登録なら、登録番号を書かない(適格請求書と誤認させない)
  • 請求書では税抜金額と消費税額を分ける。源泉徴収の計算基礎が税抜になる
  • 入金額が請求額と違う理由は、源泉徴収(仮払税金)と振込手数料(支払手数料)
  • 差額を処理しないと、原因不明の売掛金が積み上がる
  • 複数月分の請求でも、売上は役務提供の月ごとに計上する
  • エージェント経由でも、売上は契約報酬の総額。手数料は経費として別建て

参考資料

対象リンク
国税庁 インボイス制度(適格請求書等保存方式)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htm
国税庁 No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2792.htm
公正取引委員会 下請法・フリーランス法https://www.jftc.go.jp/
読み終わったら記録しておくと、目次で進み具合が分かります。