フリーランスエンジニアの実務

住民税・個人事業税・国民健康保険料

この部の 6 / 7 章 ・ 全体で 39 / 53 章 ・ 読了目安 18

この章を読むとできるようになること
  • 確定申告が住民税・国保料まで波及する構造を説明できる
  • 個人事業税の課税対象になるか判定できる

確定申告を終えて所得税を払うと、それで終わりだと思ってしまいます

実際には、その申告データが自治体に送られ、3つの請求が後から来ます

6月  住民税の通知(年4回払い、または一括)
8月  個人事業税の第1期(該当業種の場合)
6月〜 国民健康保険料の通知(自治体により時期が異なる)
11月 個人事業税の第2期

所得税より、これらの合計のほうが大きいことも普通にあります。

住民税

住民税 = 所得割(課税所得 × 10%)+ 均等割(定額)
特徴内容
課税の基準前年の所得
申告確定申告をすれば別途の申告は不要
通知6月ごろに納付書が届く
納付6月・8月・10月・翌1月の4期(普通徴収)、または一括
税率所得割は一律10%(市区町村6% + 都道府県4%)が基本
住民税は前年の所得に対する請求
独立1年目(6月): 前年=会社員時代の所得に対する住民税が来る
                   (会社の給与天引きが終わっているので、自分で払う)
収入が落ちた年   : 前年の高い所得に対する住民税が来る

稼げなかった年に、稼げた年の税金を払う。 この構造がフリーランスを苦しめます。 納税カレンダーと資金繰りで対策を扱います。

所得税との違い

□ 所得控除の額が所得税と違う(基礎控除・扶養控除などが少し低い)
□ 税率は一律(累進ではない)
□ 均等割が別途かかる
□ 課税されるタイミングが1年遅れる

個人事業税

都道府県の税金です。すべての事業にかかるわけではありません。

個人事業税 = (事業所得 + 青色申告特別控除額 − 各種控除 − 事業主控除290万円)× 税率
項目内容
税率業種により3% / 4% / 5%(多くは5%)
事業主控除年290万円(年の途中の開業は月割り)
青色申告特別控除加算される(つまり控除の効果が無い)
申告確定申告をすれば別途不要
納付8月・11月の年2回
青色申告特別控除は個人事業税では効かない
事業所得(青色控除後)  6,350,000
  + 青色申告特別控除      650,000   ← 戻される
  − 事業主控除          2,900,000
────────────────────────────────
課税標準               4,100,000
  × 5%
────────────────────────────────
個人事業税               205,000

所得税・住民税では効く65万円控除が、事業税では効きません

エンジニアは課税対象か

個人事業税は法定業種(70業種)に該当する事業にかかります。 ソフトウェア開発は、実態により**「請負業」** などに該当すると判断されることが多いです。

判断は都道府県税事務所が行う
□ 受託開発・システム開発 → 請負業として課税対象と扱われることが多い
□ 純粋な技術指導・執筆のみ → 該当しないと判断されることもある

国税ではなく地方税なので、税務署ではなく都道府県税事務所が窓口です。 判断に迷う場合はそちらに確認してください。

なお、事業所得が290万円以下なら事業主控除で課税されないため、 多くの人は最初の数年で気にする必要がありません

記帳上の扱い

個人事業税は経費になります(租税公課)。所得税・住民税とは違います。

借方: 租税公課 205,000  貸方: 普通預金 205,000

国民健康保険料

確定申告の所得が、そのまま保険料の算定に使われます健康保険をどうするか)。

保険料 = 所得割(前年の所得 − 基礎控除等)× 料率
       + 均等割(加入者数 × 定額)
       + 平等割(世帯あたり。無い自治体もある)
特徴内容
算定の基準前年の所得
通知6月ごろ(自治体による)
納付年8〜10回に分割されることが多い
上限年間の上限額がある(100万円前後。毎年改定)
所得を1円下げると、税金以上に保険料が下がる
所得が10万円下がった場合の効果(概算)
  所得税         −2万円(税率20%)
  住民税         −1万円
  国民健康保険料  −1万円前後(料率10%前後の自治体)
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  合計           −4万円前後

実効的な負担率は、所得税率+住民税10%+国保料率で考えるのが正確です。 青色申告特別控除65万円の価値が大きいのは、この3つ全部に効くからです。

3つの請求のタイミング

 3月15日  所得税の納付
 3月31日  消費税の納付
 6月     住民税の通知 → 第1期の納付
 6〜7月   国民健康保険料の通知 → 分割納付が始まる
 7月     所得税の予定納税(第1期)
 8月     住民税(第2期)/個人事業税(第1期)
10月     住民税(第3期)
11月     所得税の予定納税(第2期)/個人事業税(第2期)
 1月     住民税(第4期)

年間を通じて、ほぼ毎月なにかを払っています。

事業所得(青色申告特別控除65万円を引いた後)が635万円でした。所得税は約38万円と計算されています。この後に来る請求として、想定しておくべき金額の合計はおおよそいくらでしょうか?(住民税・個人事業税・国民健康保険料の概算)

この章のまとめ

  • 確定申告の後に、住民税・個人事業税・国民健康保険料が続く
  • いずれも前年の所得が基準。稼げなかった年に前年分の請求が来る
  • 住民税は所得割10% + 均等割。6月・8月・10月・翌1月の4期
  • 個人事業税は事業主控除290万円を引いた後に3〜5%。8月・11月
  • 個人事業税では青色申告特別控除が加算され、効かない
  • ソフトウェア開発は請負業として課税対象と扱われることが多い。窓口は都道府県税事務所
  • 個人事業税は経費になる(所得税・住民税は経費にならない)
  • 実効負担は所得税率 + 住民税10% + 国保料率で考える

参考資料

読み終わったら記録しておくと、目次で進み具合が分かります。