フリーランスエンジニアの実務

青色申告特別控除65万円の条件

この部の 3 / 7 章 ・ 全体で 36 / 53 章 ・ 読了目安 16

この章を読むとできるようになること
  • 65万円控除の要件を1つずつ確認できる
  • 期限後申告の影響を説明できる

青色申告特別控除65万円は、要件を1つでも落とすと55万円か10万円になります。

65万円 … 複式簿記 + BS・PL の添付 + 期限内申告 + e-Tax 送信(または優良な電子帳簿)
55万円 … 複式簿記 + BS・PL の添付 + 期限内申告(紙で提出)
10万円 … 上記を満たさない場合

差額は税率30%なら年16万円以上。この章で要件を1つずつ確認します。

要件1: 青色申告の承認を受けている

□ 「所得税の青色申告承認申請書」を期限内に提出済み([開業届と青色申告承認申請書](/chapters/kaigyo-todoke/))

開業から2ヶ月以内(既存事業者は3月15日まで)。 これが無ければ、他の要件を満たしても白色です。

要件2: 事業所得(または事業的規模の不動産所得)である

□ 雑所得では使えない([個人事業主とは何か](/chapters/what-is-sole-proprietor/))

帳簿を作成・保存していることが、事業所得と判断される重要な要素になります。

要件3: 複式簿記による記帳

□ 正規の簿記の原則(=複式簿記)で記帳している
□ 仕訳帳・総勘定元帳を備えている

会計ソフトで取引を登録していれば、自動的に満たされます(なぜ簿記が必要か)。

要件4: 貸借対照表と損益計算書を添付する

□ 青色申告決算書の4ページ目(貸借対照表)まで記入する
貸借対照表が空欄だと55万・65万は取れない

会計ソフトが自動で作りますが、開始残高が未設定だったり、 残高が合っていないと正しい BS になりません(freee の初期設定よくある登録ミスと直し方)。

「BS を出したくないから10万円控除でいい」という選択は、 年間十数万円を捨てることになります。

要件5: 期限内申告

□ 3月15日(土日なら翌開庁日)までに申告する
1日遅れると65万円が10万円になる

期限後申告になると、青色申告特別控除は10万円に下がります。 さらに無申告加算税・延滞税が加わります。

控除の差 55万円 × 税率30% ≒ 16.5万円
無申告加算税・延滞税      +α

間に合わないと思ったら、とりあえず期限内に出す。 数字の間違いは後から修正申告で直せますが、期限は取り返せません

要件6: e-Tax 送信 または 優良な電子帳簿の保存

65万円と55万円を分けるのがここです。

方法A: e-Tax で申告書・決算書を送信する(最も簡単)
方法B: 「優良な電子帳簿」の要件を満たして保存し、届出書を提出する
迷わず e-Tax を選ぶ

方法Bは、訂正削除履歴の保持・検索機能など要件が細かく、 事前の届出も必要です。

方法A(e-Tax 送信)なら、マイナンバーカードとスマホがあれば完結します。 65万円控除のためだけでも、e-Tax にする価値があります確定申告のやり方)。

控除額の上限

青色申告特別控除は、事業所得の金額を超えて控除できない
事業所得(控除前)40万円 → 控除できるのは40万円まで(所得ゼロ)
事業所得が赤字         → 控除額はゼロ(赤字は増やせない)

65万円控除の価値

所得税率10%の人: 所得税 6.5万 + 住民税 6.5万 = 約13万円
所得税率20%の人: 所得税13万 + 住民税 6.5万 = 約20万円
所得税率23%の人: 所得税15万 + 住民税 6.5万 = 約22万円

さらに、国民健康保険料の算定にも影響します(所得が下がるため)。 会計ソフトの年額(1〜3万円程度)は、これだけで十分回収できます。

青色申告の他の特典(再掲)

65万円控除以外にもあります(青色申告と白色申告)。

□ 純損失の繰越控除(3年)
□ 純損失の繰戻し還付
□ 少額減価償却資産の特例(30万円未満を全額経費に。[10万・20万・30万の壁](/chapters/asset-thresholds/))
□ 青色事業専従者給与
□ 貸倒引当金

チェックリスト

□ 青色申告承認申請書を提出済み
□ 事業所得として申告する
□ 会計ソフトで複式簿記の記帳をしている
□ 貸借対照表の残高が実際と一致している
□ 3月15日までに申告する
□ e-Tax で送信する
□ 事業所得が65万円以上ある(下回る場合は所得の額まで)

複式簿記で記帳し、貸借対照表も作成しました。しかしマイナンバーカードの更新が間に合わず、3月14日に税務署へ紙で提出しました。青色申告特別控除はいくらになるでしょうか?

この章のまとめ

  • 65万円の要件は6つ。承認・事業所得・複式簿記・BS 添付・期限内申告・e-Tax
  • e-Tax か優良な電子帳簿かが、65万円と55万円を分ける。迷わず e-Tax にする
  • 期限を1日過ぎると10万円に落ちる。間違いは直せるが期限は取り返せない
  • 貸借対照表が正しく作れていないと、そもそも要件を満たさない
  • 控除額は事業所得を超えられない。赤字は増やせない
  • 効果は所得税・住民税で年13万〜22万円。会計ソフト代は余裕で回収できる

参考資料

対象リンク
国税庁 No.2072 青色申告特別控除https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
国税庁 No.2070 青色申告制度https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
国税庁 e-Taxhttps://www.e-tax.nta.go.jp/
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