フリーランスエンジニアの実務

消費税の申告と納付

この部の 4 / 4 章 ・ 全体で 33 / 53 章 ・ 読了目安 16

この章を読むとできるようになること
  • 消費税の申告スケジュールを把握できる
  • 納税資金を先に確保する仕組みを作れる

所得税の申告が終わっても、課税事業者にはもう1つ申告が残っています。

所得税の申告・納付 … 3月15日
消費税の申告・納付 … 3月31日   ← 忘れやすい

そして消費税は、所得税より納付額が大きくなることもあります。 利益ではなく売上に対して計算されるからです。

スケジュール

時期やること
1月〜2月帳簿の税区分を確認する
2月所得税と合わせて納税額の見込みを立てる
3月15日所得税の申告・納付
3月31日消費税の申告・納付
3月31日(振替納税なら口座振替は4月下旬)
8月・11月など中間申告・中間納付(前年の税額が一定以上の場合)
消費税は「赤字でも納める」

所得税は、赤字なら払いません。消費税は違います

売上 800万円、経費 900万円 → 所得は赤字(所得税ゼロ)
それでも預かった消費税に対する納税義務は残る

赤字の年こそ、消費税の納税が資金繰りを直撃します。

申告書の作り方

会計ソフトを使っていれば、帳簿から自動で作成されます。

1. 課税方式を確認する(本則課税 / 簡易課税 / 2割特例)
2. 売上の税区分が正しいか確認する
     □ 課税売上(10%)
     □ 非課税・不課税の混入がないか
     □ 輸出免税の対象がないか
3. (本則課税の場合)仕入の税区分とインボイスの有無を確認する
4. 消費税申告書を生成する
5. e-Tax で送信する
2割特例は申告書上で選択する

2割特例は事前の届出が不要で、申告書で「適用を受ける」と選ぶ方式です。

会計ソフトの消費税申告の設定画面に選択肢があります。 簡易課税で届出済みの人でも、条件を満たせば2割特例を選べます (有利なほうを選択できます)。

納付方法

所得税と同じ選択肢があります。

方法特徴
振替納税口座引き落とし。引き落としが4月下旬になり、実質的に猶予される
ダイレクト納付e-Tax から口座振替。日付を指定できる
クレジットカード納付決済手数料が自己負担
コンビニ納付30万円以下
金融機関・税務署の窓口現金・納付書
スマホアプリ納付上限あり
振替納税は資金繰りの武器になる

振替納税にすると、

所得税  … 3月15日期限 → 4月中旬〜下旬に引き落とし
消費税  … 3月31日期限 → 4月下旬に引き落とし

1ヶ月ほど支払いが後ろにずれます。延滞税もかかりません。 手続きは口座振替依頼書を1回出すだけです。

ただし残高不足だと期限内納付にならないので、引き落とし日の残高管理は必須です。

中間申告

前年の消費税額(国税分)が一定額を超えると、中間申告と納付が必要になります。

前年の消費税額(国税分)が
  48万円超  400万円以下 → 年1回の中間申告
  400万円超 4,800万円以下 → 年3回
  4,800万円超 → 年11回
中間納付は「前払い」

中間納付した額は、確定申告で精算されます。多く払っていれば還付されます。

資金繰りの観点では、年の途中で納税が発生するという認識が重要です。 所得税の予定納税(納税カレンダーと資金繰り)と時期が重なることもあります。

納税資金の置き方

消費税は「預かっているお金」です。使ってしまうと納付できません

おすすめの運用:
  入金があったら、消費税相当額(または納税見込み額)を別口座へ移す

  2割特例なら … 受け取った消費税の20%
  簡易課税なら … 受け取った消費税の50%(第5種)
  本則課税なら … 受け取った消費税の70〜90%(経費次第)
「消費税分は自分の売上」という感覚が事故を生む

免税事業者だった期間が長いと、上乗せ分を売上として使う習慣がつきます。

課税事業者になった初年度は、その感覚のまま1年を過ごし、 3月31日に納税額を見て青ざめる——これが典型的な失敗です。

課税事業者になった月から、別口座への移動を始めてください。

申告を忘れた場合

□ 無申告加算税
□ 延滞税
□ (悪質な場合)重加算税

期限後でも、自主的に早く申告するほど加算税は軽くなります。 気づいた時点ですぐ申告してください(よくある登録ミスと直し方税務調査に備える)。

廃業・免税に戻る場合

□ 課税事業者でなくなっても、その課税期間の申告義務は残る
□ 廃業した場合も、廃業日までの期間について申告が必要
□ インボイス登録の取消しには届出が必要([インボイス制度とフリーランス](/chapters/invoice-system/))

インボイス登録をして2年目、2割特例で申告しています。今年は大型案件が続き、課税売上が1,400万円(税抜)になりました。翌年以降の消費税について、何を準備すべきでしょうか?

この章のまとめ

  • 消費税の申告・納付期限は3月31日(所得税は3月15日)
  • 赤字でも消費税は納める。利益ではなく売上に対して計算されるため
  • 2割特例は申告書で選択する(届出不要)。簡易課税の届出済みでも有利なほうを選べる
  • 振替納税にすると引き落としが4月下旬になり、実質的に猶予される
  • 前年の税額が一定以上なら中間申告・中間納付が発生する
  • 入金のたびに納税見込み額を別口座へ移す。預かっているお金は自分のものではない
  • 期限を過ぎても、自主的に早く申告するほど加算税は軽い

参考資料

対象リンク
国税庁 消費税及び地方消費税の申告https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/shohi.htm
国税庁 No.6609 中間申告https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6609.htm
国税庁 振替納税https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/012.htm
国税庁 国税の納付手続https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/index.htm
読み終わったら記録しておくと、目次で進み具合が分かります。