青色申告と白色申告
この部の 4 / 6 章 ・ 全体で 7 / 53 章 ・ 読了目安 18 分
- 青色申告で得られる特典を列挙できる
- 自分がどの控除額を狙えるか判断できる
「白色は簡単、青色は大変」——これはもう古い理解です。
2014年以降、白色申告にも記帳と帳簿保存の義務があります。 つまり「白色だから帳簿を付けなくていい」時代は終わっています。 そして会計ソフトを使えば、複式簿記の帳簿は自動でできます。
手間はほぼ同じで、得られるものだけが大きく違う。それが今の青色と白色です。
青色申告で得られるもの
| 特典 | 内容 |
|---|---|
| 青色申告特別控除 | 所得から最大65万円を引ける(要件は青色申告特別控除65万円の条件) |
| 純損失の繰越控除 | 赤字を3年間繰り越して、翌年以降の黒字と相殺できる |
| 純損失の繰戻し還付 | 前年が黒字なら、赤字を前年に戻して税金を返してもらえる |
| 少額減価償却資産の特例 | 30万円未満の資産を買った年に全額経費にできる(10万・20万・30万の壁) |
| 青色事業専従者給与 | 生計を一にする家族への給与を経費にできる(届出が必要) |
| 貸倒引当金 | 売掛金の一定割合を、回収不能に備えて経費にできる |
控除65万円は「税金が65万円安くなる」ではなく「課税所得が65万円減る」です。
所得税率10%の人: 所得税 6.5万 + 住民税 6.5万 = 約13万円
所得税率20%の人: 所得税13万 + 住民税 6.5万 = 約20万円
所得税率23%の人: 所得税15万 + 住民税 6.5万 = 約22万円
さらに国民健康保険料の算定にも影響します(所得が下がるため)。 会計ソフトの年額の数倍は、これだけで回収できます。
控除額は3段階
| 控除額 | 要件 |
|---|---|
| 65万円 | 複式簿記 + 貸借対照表と損益計算書を添付 + 期限内申告 + e-Tax 送信(または優良な電子帳簿の保存) |
| 55万円 | 複式簿記 + 貸借対照表と損益計算書を添付 + 期限内申告(紙で提出) |
| 10万円 | 上記を満たさない場合(簡易簿記など) |
3月15日を1日過ぎただけで、65万円控除は10万円に落ちます。 期限内申告が要件だからです。
さらに無申告加算税・延滞税も付きます。 「間に合わないかも」と思ったら、とにかく期限内に出す。 間違いは後から修正申告で直せますが、期限は取り返せません。
赤字の繰越が効く場面
独立1年目は、開業費・機材購入・案件の空白で赤字になることがあります。
1年目: −100万円(赤字)
2年目: +500万円(黒字)
白色: 2年目は500万円に課税
青色: 2年目は500 − 100 = 400万円に課税 ← 100万円分の課税所得が減る
この繰越は3年間使えます。 そして、青色申告でなければ1円も繰り越せません。
前年が黒字で今年が赤字の場合、赤字を前年に戻して、前年に払った税金の還付を受ける こともできます(純損失の繰戻し還付)。
資金繰りが苦しい年に現金が戻ってくるので、繰越より有利な場面があります。 ただし還付請求をすると税務署の調査対象になりやすいと言われます。 帳簿がきちんとしていれば恐れる必要はありません(税務調査に備える)。
白色申告に残る義務
「白色なら楽」と思っている人向けに、白色でも必要なことを並べます。
□ 収入・経費を記帳する(簡易な方法でよいが、記帳義務はある)
□ 帳簿を7年間保存する
□ 領収書・請求書などの書類を5年間保存する
□ 確定申告をする(収支内訳書を添付)
つまり、帳簿を付ける手間はほぼ変わらないのに、特典だけが無い状態です。
| 白色 | 青色(65万円) | |
|---|---|---|
| 記帳 | 必要(簡易) | 必要(複式・ソフトが自動でやる) |
| 提出する決算書 | 収支内訳書 | 青色申告決算書(BS・PL) |
| 特別控除 | なし | 65万円 |
| 赤字の繰越 | なし | 3年 |
| 30万円未満の一括経費 | なし(10万円未満まで) | あり |
| 家族への給与 | 制限あり(事業専従者控除の定額) | 届出により実額(適正額) |
会計ソフトが複式簿記を肩代わりする
「複式簿記」と聞くと身構えますが、実際の作業はこうです。
1. 口座・カードを連携する
2. 明細に対して「これは何の支出か」を選ぶ
3. 決算時にボタンを押すと、仕訳帳・総勘定元帳・BS・PL が出る
借方・貸方を手で書く場面はほとんどありません。 それでも第2部で簿記を扱うのは、ソフトが出した結果が正しいか判断するためです。 残高が合わない時、ソフトは教えてくれません。
独立1年目、開業準備の機材購入がかさんで年間の事業所得が80万円の赤字になりました。青色申告の承認は受けています。2年目は黒字の見込みです。この年の申告で最も重要なことは何でしょうか?
この章のまとめ
- 白色にも記帳・保存の義務がある。「白色は楽」はもう成り立たない
- 青色の特典は、65万円控除・赤字の3年繰越・繰戻し還付・30万円未満の一括経費・専従者給与
- 控除は65万 / 55万 / 10万の3段階。65万にはe-Tax(または優良な電子帳簿)と期限内申告が要る
- 期限を1日過ぎると65万が10万に落ちる。間違いは後で直せるが、期限は取り返せない
- 1年目が赤字でも必ず申告する。繰り越せなければ翌年の黒字がまるごと課税される
- 複式簿記は会計ソフトがやる。簿記を学ぶのは、ソフトの結果を検算するため
参考資料
| 対象 | リンク |
|---|---|
| 国税庁 No.2070 青色申告制度 | https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm |
| 国税庁 No.2072 青色申告特別控除 | https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm |
| 国税庁 No.2070 純損失の繰越しと繰戻し | https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm |
| 国税庁 記帳義務(白色申告者) | https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/kicho/index.htm |